足まわりコラム
ホイールの締め付けトルク(規定トルク)は何キロが正解?
ホイールの締め付けトルクについて。ボルト&ナットは、締めすぎもユルめも危険。だからこそ決まっている、締め付けトルク(規定トルク)。ドレスアップに限らず、誰でもタイヤ&ホイール交換作業をする可能性はあるので、正確な知識を持っておきたい。
ホイールの締め付けトルク・規定トルクとは何か?
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タイヤ&ホイールの交換方法は別記事でも解説していますが、DIYでやるとき、悩ましいのがホイールナットの締め付けトルクの問題。
●レポーター:イルミちゃん
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今日はホイールナットの締め付けトルクに特化して、解説していきましょう。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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例えば。
こういう締め方(↓)がNGなのは有名ですね〜。 -
これ、何が問題なのかというと「締め付け過ぎる」ということですね。
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ボルト&ナットは、締め付け過ぎるとネジ山をつぶしてしまい噛んでしまったりするし、ハブボルトが折れてしまうこともあるので……
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締め過ぎは危険なんですよね〜。ユルめにしておく?
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ユルかったらホイールが外れる恐れがあるので、なお危険です。
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ではどうすればいい!?
……ということになります。 -
だから、ホイールナットに限らず、ネジには「この位の力で締め付けましょう」という規定トルクが指定されているのです。
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ホイールナットの規定トルクって?
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普通車クラスだと規定トルクは10〜12キロ(100〜120N·m)位です。軽自動車の場合で、8〜10キロ(80〜100N·m)位。
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10〜12キロって、言われてもなぁ。10キロ? 11キロ? 12キロ?
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車重などにもよるので、厳密な数値は車種ごとの整備解説書で確認するか、車を買ったディーラーで聞けば教えてくれると思います。
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そっか。
車種によるんだ。 -
とはいえ、まあ、通常は10キロ付近で締めておけば問題ありません。12キロというのは、ある程度慣らしてからの増し締めレベルの締め付けトルクです。
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増し締め?
それは、いつやるんですか? -
ホイール取り付け後、100キロ位走行してから、が望ましいですね。
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えー、そうなんだ!
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理想を言えば、そうなんです。厳密なセンターを出す意味でも。
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でも店でタイヤやホイールを交換してもらった時に、その後100キロ走ったあとで、「増し締めお願いします」……と律儀に戻ってくるお客さんなんているのかな?
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いますよ。
ただ、遠方の人だと、そこまでするのは厳しいですよね。 -
自分でホイール交換するかどうかは別にしても、やはり「ホイールナットの締め付けトルクについての知識」は、あったほうが良さそうです。
10キロの締め付けトルクって、どの位?
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ここまでの話で、通常は10キロ位の締め付けトルクで問題ないのは分かりましたが……
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問題は、10キロの締め付けトルクがどの位か分からないってことですね。リクツを言うと……、
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ちょっと待った! こんな机上の論では、DIYのホイールナット締め付けの役には立たない気がするぞ? 10キロのオモリ、持ってないしね。
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……まあ、そうですよね。
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もっと感覚的に聞きますが……ホイール取り付けでよく行われる、クロスレンチで仕上げにパンパンってやるのは、何キロ位ですかね?
●その棒の先端に10キログラムのオモリを載せたとき、ナットにかかる力が10キロ(kgf·m)の締め付けトルク
※単位は以前は10kgf·mだったが、現在では100N·m(ニュートンメートル)が用いられている。※正確に言うと、1kgf・m=98.0665mN·m
パンパン。よ〜し!
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自分の場合の基準で言いますが、ぜんぜん10キロには達していないトルクです。
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ホホウ。けっこう力持ちの佐藤研究員でも、そうなんだ。
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あの「パンパン」は僕らの中ではまだ仮締め段階で、そのあと車両をジャッキから降ろして、本締めするのです。
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その本締めが、10キロ。
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10キロって、けっこうな力をかけないといきませんよ。12キロで締めていると、ユーザーが自分で外そうとしたときに固くて外れず「締め過ぎ!」……と文句を言われることがあるレベルです。
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あはは……。
規定トルクなのに。 -
普通車は10〜12キロと言いましたが、10キロでも思ったよりも強いトルクです。だから、12キロに達していないからナットが外れるとか、そういう話ではない。
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なるほどね。
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まあ、いずれにせよ、規定トルクに沿って正確に締め付けるなら、トルクレンチを使うしかないですね。
規定トルクで締め付けできるトルクレンチ
トルクレンチの使い方は?
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それではここで、トルクレンチの使い方を解説します。
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使い方といっても、目盛りを合わせて、あとは普通に締めるだけ。
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10キロ(100N・m)に合わせたところ(↑)ですね。
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トルクレンチは、指定したトルクに達すると「カチ」っと音がする。ココで、締め込むのをやめればいいのです。
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カチっといったら、力を抜くんですね。
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カチっという瞬間に、少し力が逃げる感触がありますよ。そこで締め込むのを止めるのがコツ。
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無視したらどうなるの?
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トルクレンチを使っていても、そこからさらに力をかけたら、もっと締め込んでしまいますので。
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なるほどぉ。DIYでのホイール取り付けを安全に行うなら、トルクレンチが欲しいところです。
カチ!
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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