ツライチオフセットの計算方法
車のホイールのオフセット(インセット)計算が理解できると、DIYでもツライチオフセットをはじき出すことが可能になる。「オフセットが1下がると、リムが1ミリ外側に出る」……この動きを理解するのが、ツライチへの第一歩だ。同時にホイールのリム幅(太さ)を上げていく計算方法も、初心者向きに解説していく。
オフセットが1下がると、リムは1ミリ外側へ出る
-
今日は自分でツライチオフセット(インセット)を計算する方法について解説したいと思います。
●レポーター:イルミちゃん
-
そのためにはまず、オフセット(インセット)を理解しないといけませんね。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
-
なお、ホイールのオフセットは、現在は「インセット」が正しい言い方ですが、まだまだオフセットという言い方をする人のほうが多いので、この記事ではあえてオフセットと表記します。
-
で、ツライチオフセットを計算するためには、まず基準が必要ですね。何もないところからは逆算できないので。
-
基準とは?
-
今履いているホイールのリム幅(太さ)とオフセットを知る必要があります。
-
もしも、まだホイールが純正のままだったら?
-
純正だとしても、ホイールにはサイズが表記してあるので、裏側のリムを見れば分かりますよ。
-
今回の30プリウスのホイールの例だと、17×7.0とか+53と書いてありますね。
-
つまりこのホイールは、17インチの7J+53だという意味です。
-
この+53が、オフセット。
-
そうです。そして次はこのホイールがどのくらいフェンダーから引っ込んでいるかを調べましょう。
-
そんなの、どうやって調べるんですか? もしや何か特殊工具でも……?
-
糸とオモリを用意します。
-
い、糸とオモリって……原始的過ぎない?
-
今も昔も、これが簡単かつ確実にやる方法です。フェンダーアーチの頂点からオモリ付きの糸を垂らします。
-
そしてスケールで、リムの頂点から糸までの距離を測る。
-
へぇ〜!
こうやってホイールの引っ込み具合を測るんですねぇ。 -
約53ミリぐらい引っ込んでます。
-
ここまで分かれば、基本的な計算が可能になります。
現状履いているホイールのサイズを確認する
サイズの表記を発見!
オモリで糸が真っ直ぐに下がる
ホイールの引っ込み量を測定
オフセットが1下がると、ホイールは1ミリ外側へズレる
-
オフセットの数値は、下げるほどホイールが外側方向に移動します。
-
つまり今引っ込んでいるホイールが、ツライチに近づいていく。
-
そうですね。
そしてオフセットの1は、1ミリに相当します。 -
オフセット数値が1下がると、ホイールが1ミリ外側方向にズレる。わかりやすい♪
-
さきほど測ってみたら、7J+53の純正ホイールが、53ミリ引っ込んでいましたよね。
-
ということは、53ミリ外側に出せばツライチになる……オフセットを53下げればいいんだ!
-
で、どういうホイールサイズに?
-
7J+53から、53引いたら、7Jの0(ゼロ)。つまり7J±0がツライチオフセットですね!
-
まあ、計算上はそうかも知れませんが、実際にはその答えは不完全ですよね。そんなホイールないし。
-
え、なんでですか?
-
そこまでオフセットを下げる余地があるなら、もっとホイールを太くできるからですよ。
-
……そういえば、7Jは純正ホイール級の太さだった。
この状態からオフセット計算だけで出してくるのはあり得ない
リム幅を1J上げると、12.7ミリ外側に伸びる法則
-
リム幅はホイールの太さのことですが、これは1J=25.4ミリと決まっています。
-
フムフム。
1インチ表記と同じ幅なんですね。 -
で、さっきの純正ホイールが53ミリ引っ込んでいたのを思い出してください。どのくらい太くできる余地がありますか?
-
1Jが25.4ミリなら、2Jで50.8ミリ太くなる計算ですね。つまり今回は2Jアップはいける。
-
ここで注意ポイント。1Jアップしたとき、ホイールは外側にも内側にも伸びるので、外側に出てくる分は半分の0.5Jぶんだけです。
-
あ、そっか! てことは、1Jアップするごとに、12.7ミリずつリムが外側に伸びる。
-
そういうことです。
-
ならば! 4Jアップしたとしても、50.8ミリ外側にズレるだけだから、30プリウスには7J→11Jが履ける!
-
……まあ、無理でしょうね。僕も10Jまでなら見たことありますけど。
-
ええ〜!!
どういうことですか? 計算と違う。 -
そんなに太くしたら、ホイールが内側に当たってしまうからですよ。
-
……そっか。
内側のことを忘れていた。 -
ツライチの計算をするときは、可能な範囲でホイールを太くしていきますが、30プリウスを例にすれば太さ的には9Jぐらいまでが無難なサイズです。
-
でもなぁ、9Jだとすると、純正比で2Jアップだから、25.4ミリぶんしか外側に伸びませんよ? ツライチまでは53ミリもあるのにィ。
-
だから、足りないぶんは、オフセット数値を下げればいいんですよ。最初の話を覚えてますか?
-
そういうことか〜! えっと、9Jにした時点で25.4ミリ外側方向に伸びているんだから、残りの引っ込みぶんはあと27.6ミリか。
-
そのぶんのインセットを下げれば、計算上はほぼツライチになります。
-
もともとの純正のオフセットが+53だったから27.6を引き算して、オフセット+25.4ですね。
-
計算上は9J+25.4、つまり近いサイズでいうと、9J+26あたりでツライチになる可能性が高いと分かります。
-
おお〜!!
ほぼ計算通りじゃないですかぁ。 -
これが、ツライチオフセット計算の基本的な考え方ですね。
ホイールの内側にはショックがいる
9J+26を履くとこうなった
計算通りにやるのは実際にはリスキー
-
ただ、実際にツライチオフセットを計算するときは、計算通りにやるのはリスクがあります。
-
と言いますと?
-
ホイールを本当にツラツラまで持ってきたら、走行中にタイヤが当たる可能性が高い。
-
あー。ツライチのリスクは以前にも「ツライチとツラウチはどっちがいいの?」でも教わりましたねぇ。
-
それとこのモデル車の場合は、フェンダーの爪折りもしてあるし、インナーもタイヤが当たる部分はヒートガンで温めて凹ませてあります。
-
つまりいろいろ加工してある状態。
-
もっと細かいことを言えば、インナーカバーが爪に固定されている部分も重なり方を変えて、ツメの上側にカバーを押し込みました。カバーの厚みが消えたぶんだけ、若干隙間が増えています。カバーの固定ピンも取っているし。
-
細かーーっっ。
-
その結果として、ツライチでも当たらずに履けています。
-
確かに、そういう技ナシで、計算通りのサイズを買ったらタイヘンなことになりますね。
-
爪を折らないのであれば、そのぶん引っ込める必要もあります。
-
なるほどぉ。
-
こういう要素を踏まえて、ツライチオフセット計算の結果を参考にしつつも、必要なぶんだけ内側に入れるのが現実的なホイールサイズの選び方ですね。
ツライチのために爪折り加工済み
タイヤ干渉をかわすためにインナーも加工
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
関連記事
- ツライチと車検。合法と非合法の境界線
- ホイールスペーサーの厚みは、なぜ5mmが定番なのか?
- ツライチとは? その意味、意義、歴史をまとめたホイール入門
- ツライチとツラウチはどっちがいいの?
- ツライチ狙いのフェンダー爪折り工学
- 引っ張りタイヤのリスクマネージメント
- 引っ張りタイヤの限界サイズとは?
- 引っ張りタイヤは車検に通る? 専門家に取材?
- タイヤサイズを変更すると車高は変わる?
- スペーサーの正しい使い方
- ワイドトレッドスペーサーの取り付け方法
- ワイドトレッドスペーサーは車検に通る? 取り付け時の注意点
- インチアップする前にローダウンした方がよい理由
- フェンダーとタイヤ&ホイールの隙間を埋めるには?
- フロントはツライチよりも、ハンドル全切りを優先すべき理由
- インチアップしても車検に通るタイヤサイズの決め方
- タイヤ外径の計算方法。純正と揃えるには…
- 扁平タイヤでリムを傷付けない段差の越え方
- タイヤのハミ出しに関する保安基準の改正は、誤解が多い!?
- オフセット計算だけでツライチにできない理由
- ツライチにできる足回りと、できない足回りの違い
- ホイールのJ数選びでやりがちな失敗と、その回避策
- 10Jクラスのホイールを、履ける車と履けない車の違い
- はみ出したホイールをフェンダー内に引っ込める方法
- ツライチが左右で違う! 「左右差」の原因と対策
- 30プリウスを例に、プロショップ流ホイールマッチングを学ぶ
- PCD100-5穴の車に、PCD114.3やPCD112のホイールを履くには?
- ホイールとフェンダーが当たらないツラウチの極意
- 初心者のためのホイールアライメント講習スタート
- タイヤ交換の安全なやり方。車載ジャッキの使い方
- スタッドレスタイヤの保管方法。「空気圧」と「置き方」に注意!
- タイヤチェーンの付け方