タイヤ交換の安全なやり方「補習編」
ホイールナット取り付け時は「座面」に注意!!
ホイールナットの取り付けは、座面をしっかり意識しよう! という注意喚起。安全にかかわる部品は、最初から「付くようにしか付かない」ことも多いのだが、ホイールナットに関しては、油断がならない。実際にあった恐い実例を交えて、わかりやすく解説する。
ホイールナットの取り付け時の恐いミス・実例
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タイヤ交換の安全なやり方の連載です。今日は「補習編その2」。
※連載を初回から読むなら、「タイヤ交換の安全なやり方。車載ジャッキは使い方を間違うと倒れる」
●レポーター:イルミちゃん
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ホイールナットの取り付け時のミスについて、お話しておきます。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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ホイールを、ナットで固定する場面ですね。
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ここでひとつ、本当にあった恐い話をしておきます。
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……ごくり。
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ある日、タイヤがパンクしてしまい、自分でスペアタイヤに交換したお客さんがスパイスにやってきました。
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フムフム。
応急処置は、自分でできたんですね。 -
そうなんです。女性オーナーさんだったんですが、自分でタイヤ交換しましたと。
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エライ!
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……ところが、ホイールナットを見たら、こういう状態で付いていたのです!
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……ちゃんと付いてますけど何か?
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オイ。
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……あれ? なんかヘンなこと言いました、私。
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ナットが逆なんですよォォ。
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ええッ!! ホイールナットって逆向きに付くのッ!?
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……出た。
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だって、こういう風にしか入らないはずでしょう?
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確かに、こういう袋ナット(↑)は、向きを間違える心配はありませんが、さっきのは貫通ナットの例です。
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あ。
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センターキャップが付くタイプのホイールだと、貫通ナットが使われていたりします。
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この場合は、テーパー形状になっているほうをホイールの穴に向けて入れないと、ホイール側の座面と、ナットの形状が一致しないので、奥まで接触しません。
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このナナメラインには、深い意味があるんですね。
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テーパー側が手前を向いてしまっていると、ナットが途中で止まってしまうも同然ですから、ホイール固定が不完全な状態となります。
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あわわ……。
どうなってしまうの? -
もちろん、ホイールはブレブレ。僕が遭遇した時点で、ホイールのテーパー部分(座面)も潰れてしまっていました。そのまま乗っていたら、脱落の危険もあります。
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……無事にスパイスまで来てくれて良かった。
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本人は当然ながら自覚してなかったので、そのお姉さんには厳重に注意しておきました。
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しかし、一般市民は、テーパーを奥に向けるとか、知らない可能性はありますよね。
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僕の目には「恐ろしい光景」にしか見えないんですけど。
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そもそも、逆向きに付くようなナットを使っていること自体が紛らわしい!
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今それについてキレられても……。
タイヤ交換の手順は、「タイヤ交換方法╱タイヤの正しい付け方」参照。
NGパターン!
貫通ナットはハブボルトに貫通するタイプのナット
テーパー座ナット
テーパー形状がホイールの座面と一致する
座面が一致しないホイールナットを流用してはダメ!!
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ちなみにこの「座面」は、社外ホイールだとテーパー形状(テーパー座のナット)が一般的ですが、純正ホイールの場合は、他の形状も登場します。
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テーパーだけじゃないのか。
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例えばトヨタ車に多いのが、座面が真っ直ぐの「平面座」です。
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ホイールの座面と接触する部分は、まっすぐ平面です。
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へ〜。
いろいろなカタチがあるんだ。 -
社外ホイールだとテーパーが一般的ですが、純正ホイールのナットは形状に種類があることは覚えておきましょう。
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……ということは、純正ナットを社外ホイールには流用できないケースもある。
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座面が一致していないナットを使うのは、もちろんNGです。きちんと接触しませんので。
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社外ホイールを購入したときに、合わせてホイールナットも購入する人はいいんですが、純正ナットを流用する場合は注意が必要です。
✔ 「座面」とは、ナットとナットホール側(ホイール側)が接触する面のこと。座面には形状の違いがあり、大きく分けると「テーパー座」「平面座」「球面座」がある。
✔ 形状が似ている「テーパー座」と「球面座」を組み合わせてしまうミスは、少なからず起こっている。
ナットを正しく均一に締め込むことでセンターが出る
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ホイールナットを締め込むときは、均一に、平均的に締め込んでいくのが大切、というのは本編でも言いましたが……
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先に1箇所だけを強く締め込んでしまうと、片側だけに力がかかるから……
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そうです。それによってホイールセンターがズレてしまう、ということがあり得ます
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その点は、どの座面でも同じってこと?
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そうなんですが、特にミスが多いのが、ちょっと特殊形状の「平面座」。
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平面座は、トヨタ系の純正ホイールに多いタイプでしたね。
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この平面座も、正しく締め込むとセンターが出るようになっています。逆に、もしもホイールナットがズレて入っていると、どこか一箇所が締められなくなったりする。
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フムフム。
位置関係にムジュンが生じるわけですね。 -
そこで気づけばいいんですが、気にせずインパクトレンチでガーって締め込んだりすると大惨事です。
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どうなるの?
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無理矢理ねじ込むことになるので、ハブボルトやナットがダメになったり、ホイール側がつぶれてしまったりとかもあります。
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あ〜あ。
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この「平面座」は特にやらかす人が多いので、例として挙げました。でも、どのナットでも締めるときの基本は同じです。
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全ナットをまずは仮で締め込んで、少しずつ、平均的に締め込んでいく。
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……そうやって基本に忠実にやれば、どの座面タイプであろうと、べつに難しいことはありません。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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