タイヤ交換の知識
タイヤ交換時期は、どこで判断するべきか? 「判断材料」を整理すると…
タイヤの交換時期と、判断材料。よく「スリップサインが出たら」というが、この認識だけでは不十分。では、現実的にはどこで判断するのか。タイヤ交換時期は、車に乗るすべての人が知っておくべきことなので、タイヤのプロに取材した。
スリップサイン=タイヤの交換時期という認識ではダメ
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車のタイヤ交換時期は、どこで判断すればいいのでしょうか?
●レポーター:イルミちゃん
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一般的なノーマル車とローダウン車では、判断材料も変わってきますよ。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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では、ここでは総合的に整理しておきます。
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一般的な車では、「残りミゾ」「ひび割れ具合」「年数」あたりが判断材料になってきますね。
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残りミゾの量が少なくなってくると、スリップサインが出ることは有名ですが……
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しかし内減りしているタイヤは、外側からスリップサインを見ていてもダメです。
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ふむ。
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スリップサインが出る前に、タイヤの内側がこんな状態になっているケースもあります。
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これはローダウン車の話……ですよね?
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ローダウン車はもちろんですが、内減りはローダウン車に限った話ではありません。
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ムムム。
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アライメントが狂っている車も多いし、ロールの激しい車だと、内減りしやすかったりするし。
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……そうなのか。
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そもそも最近の車は、純正状態でも少しキャンバー角を付けてタイヤを寝かせていることが多いので、基本的に内減りしやすい傾向があります。
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それならなぜ、キャンバー角を付けるのだろうか?
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それはまあ、直進安定性が増すからですね。少しキャンバー角が付いているほうが、車は走りやすいので。
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普段から「内減りする傾向があるな」と思う人は、外側のスリップサインだけ見ていてはダメなんですね。
スリップサインまであと少し
現実的なタイヤのミゾのチェック方法
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では、タイヤの摩耗具合をどうやってチェックするのか、現実的なやり方をおさらいしておきます。
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ようするに、スリップサインというより、内側のミゾまでしっかり見ておく必要があるってことです。
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しかし、内側のミゾって、よく見えませんよね。
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フロントタイヤは、ハンドルを切った状態でチェックすれば、内側まで見えます。
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リアタイヤの内減りは、覗き込んでライトで照らしてチェックしましょう。
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ここまでしている人は、少ないと思いますが……
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しかし普通に横からタイヤを見ていても、本当の摩耗具合は分かりませんよ~。
ミゾがあっても、ひび割れがひどいタイヤは交換時期を迎えている
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さて、ミゾが残っていればそれでいいかと言えば、そういうわけではありませんよね?
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普段からの走行距離が少ない人は、ミゾが残っているうちにタイヤが寿命を迎えるケースも多々あります。
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なぜなんでしょう?
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タイヤはゴム製品なので、経年劣化していきますから。
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では、その場合の判断材料は?
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見た目で分かる要素としては、タイヤのひび割れですね。
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ひび割れがひどくなってくると、亀裂が入ってエア漏れする可能性があるので要注意です。
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ウ〜ム。
実際、ミゾだけ見ていてもダメですね。 -
特にフロントタイヤ。ひどいヒビが入った状態だと、停止時にハンドルを切ったときの弾みで、プシュッっと空気が抜けてしまったりすることがありますよ。
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……まあ、亀裂に近いようなひび割れがあったら、即交換ですね。
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ハイ。ただし、ひび割れの進行具合も、車の保管状況によって変わってきます。
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では保管状態が良好で、走行距離も少ない人は、タイヤの寿命は長くなる?
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とはいえ、それでもタイヤのゴムは硬くなってはいきますので、やがて交換時期はやってきます。
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その場合は、なにで交換時期を判断するの?
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最終的には年数ですね。
5年前のタイヤなら交換時期。タイヤの製造年月日はどこに書いてある?
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もし、ひび割れがそれほど酷くはなかったとしても、5年くらい経過しているなら、タイヤのゴムは硬くなっていて性能は落ちています。
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フムフム。
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タイヤが硬いとグリップもしなくなるし、制動距離も伸びるので、少しずつ危険は増しています。
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ミゾがあっても、古いタイヤは危ないってことですね。
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タイヤを購入してから4~5年経っているなら、すでに交換時期と思ったほうがいいです。
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そういえば今のタイヤ、いつ買ったっけ???
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タイヤの製造年月日なら、タイヤを見ればチェックできますよ。
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そうなんだ。
そんなの書いてあるの? -
タイヤのサイドに書いてありますよ。方向性のあるタイヤとかだと、(左右入れ替え等で)裏側になっているケースもありますが、基本的にオモテ側に表記があります。
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X2316……?
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これがタイヤの製造年月日の表記です。
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……2316年に製造されたタイヤのようです。
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未来かよ。
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なにこの表記、恐いっ…!!
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そうじゃなくて、これは、後半の二桁の「16」が、2016年っていう意味です。
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えー、じゃあ最初の二桁はなに?
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23週です。ようするに、2016年の23週目に製造されたタイヤ。
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23週ってことは、6ヶ月くらいか。
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そうですね。
「2016年6月に製造されたタイヤ」です。 -
ほほう。これで何年経過しているかが、判断できるんだ。
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そうなんですよ。
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しかし、こんなの知らずに、何年も同じタイヤに乗り続けている人も多いでしょうね。
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スパイスに来たお客さんの最長例だと、10年前のタイヤを履いている人もいましたね。
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逆にスゴイ。
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基本的に土日に僅かな距離しか乗っていないお客さんで、ミゾも残っているんですよ。しかし、ひび割れはけっこう酷くて、危険な状態でしたね。
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走行距離が少ない人は、それはそれでリスキーなタイヤになっている可能性がありますね。
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リスクと言えば、経年変化ではなく、即交換しないとダメなタイヤの例もあります。
セパレーションが起こっているタイヤは、即交換
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タイヤの横っツラがぷっくり膨れているような、セパレーション(内部剥離)が起こったタイヤは、即交換です。
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セパレーションとは、ドレスアップカーの引っ張りタイヤで問題になるアレ。
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しかし、ノーマル車でもセパレーションを起こすケースはあります。
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そうなんだ。
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例えば、大きい段差に勢いよくドーンっと突っ込んだりすると、起こります。
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ようするにタイヤ内部の損傷ですね。
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あとは、もともと品質面で問題のある、激安タイヤではありがちな話です。
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セパレーションは見た目で確認するしかありませんね?
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見た目では分からずタイヤを外した段階で気づくケースもありますが、日常的なチェック方法としては目で見るのが大切です。
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不自然な、ポコポコっとした膨らみに注意。
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ただこれも、見えない裏側で起こっているケースも多いので要注意。
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う~ん、しかし内側のサイドウォールなんかは、いよいよ見るのが大変ですね。
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もうひとつの判断材料として「ロードノイズが最近急激にうるさくなった」場合は、内部でセパレーションが起こっている可能性があります。
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音か~。
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安いタイヤは、最初からロードノイズがうるさかったりもするのでアレですが、それでも急激な変化は、別問題。
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なるほど。
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それと、そもそもの話として、空気圧不足で走行すると、熱を持つし偏摩耗するので、タイヤの寿命が早まります。
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タイヤの交換時期を延ばすためにも、マメな空気圧の補充ってことですね。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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