足まわりコラム
アライメント調整するべき場面とは? タイヤ交換時の必要性は?
アライメント調整は、どんな時に(いつ?)必要なのか。車高調やダウンサスなど、足まわりを換えたらやるべきな気がするけれど、タイヤ&ホイールを交換しただけでも必要なのか? など、意外と知らない「アライメント調整のタイミング」について取材した。
なお、「そもそもアライメントってなに?」という人は、「初心者のためのホイールアライメント講習」から読むのがオススメ。
タイヤ&ホイール交換したら、アライメント調整は必要?
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まず、ギモンに思っている人が多いのが、タイヤ&ホイールを交換したときにアライメント調整までする必要があるのか? という問題。
●レポーター:イルミちゃん
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基本的には、必要ないです。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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でも、取る人もいますよね? タイヤ屋さんも、そう推奨している店が少なくないような……
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確かに。タイヤを新品に交換したから、ホイールアライメントもきっちり取る、という人はウチのお客さんでもたまーにいます。
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……それって、意味あるんですか? ボッタクリなのではッ???
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いやいや、そうじゃなくて。アライメントは、純正の状態でも多少狂っていたりはするものなんです。
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え!
そうなんですか? -
車をぶつけたりしても狂います。過去に一度も調整をやったことがなければ、それなりにズレているはず。
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そうなんだ。
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だから、タイヤを新品に交換したタイミングで、ヘンな減り方(偏摩耗)をしないようにしっかり取っておくというのは、意味があるってことですよ。
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あー、そういうことね。
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アライメントが狂っていると、タイヤの偏摩耗が激しいのは事実ですから。
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ただ、それは「タイヤを交換したら、アライメント調整が必須」という意味ではないわけですね。
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ハイ。タイヤ&ホイールを交換することで、ホイールアライメントが狂うわけではないので。
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では、もともとアライメントをきっちり取ってある車は、タイヤを交換したからって、そこでまた取り直す……までは必要ないんだ。
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それは、さすがに必要ないと思いますね。
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なるほどね〜。じゃあアライメント調整が必須になるは、どんな場面なんだろう?
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アライメントが狂ってしまうから、調整が必要になる……というのは、主に足まわりを交換したり分解したりした時なんですよ。
車高調やダウンサスに交換すればアライメントは狂う
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足まわりを交換したときは、アライメント調整が必要になりますね。
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車高調やダウンサスを組んだタイミングのことですね。
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そうです。
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アライメント調整の工賃(費用)って、いくら位かかるのでしょうか?
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スパイスの場合、四輪の測定、およびフロントの調整(※リアはトーションビーム式で調整不可の車が多い)料金は、1万6800円(税別)〜です。
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……ということは、車高調代、取り付け工賃の他に、アライメント調整費用まで用意しておかないとダメってことか。
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足まわり交換後は、大きくアライメントが狂っている状態。タイヤ代を考えたら、アライメント調整は、しておくほうがいいですね。
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でも、ローダウンしてキャンバー角が付いたら……タイヤが内減りするのは当然ですよね?
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そうですね。
そこは避けられない面がありますね。 -
じゃあ、アライメントなんて取っても同じでは? どうせ内減りするんだし。
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そうじゃないんですよ。同じようにローダウンしてキャンバー角が付いていても、トー角を合わせておくことは重要なんです。
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トー角っていうのは、上から見たタイヤの向きですよね。トーインが内股で、トーアウトがガニ股みたいな。
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そのトー角が狂っているとタイヤが激しく偏摩耗します。タイヤを引きずっているような走り方になるので、タイヤにとっては最悪。
足回り交換方法は、「車高調 取り付け方法をプロに取材」参照。
角度の違いは、「キャンバー角 3度╱5度╱8度を徹底比較」を参照。
ショックのボルトを外しただけでもアライメントは狂う
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足まわり自体は交換しなくても、分解すれば、やはりアライメントは狂います。ショックのボルトを外して、締め直したりとか。
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えー!
それだけで狂うの? -
ショックの固定ボルトも、多少は遊びがありますからね。一度バラして締め付け直した時点で、それはもう、元とまったく同じ状態ではないのです。
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そうなのかー。ということは、キャンバーボルトに交換したら……、
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いや、てゆーか、キャンバーボルトでキャンバーを付けている時点で、アライメントは大きく変わってます。
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それもそうですね。じゃあ、例えばワイドトレッドスペーサーを付けたりとかしたら?
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それはホイールの向きが変わるような変更ではないから、アライメントは取らなくて大丈夫です。
車高調整したらアライメント調整は必要だが…
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意外と知らない人が多いですが、車高が変わった時点で、アライメントは少なからず狂います。
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だから、車高調を取り付けたら、アライメントを取らないとダメなんですよね。それは、さっき聞いた話では?
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それに加えて、車高調がもともと付いていて、車高調整でもっと下げたりしたら……
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ええーっ!! 車高調整したら、アライメント調整もやり直し……とか言う気ですか。まさか。
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厳密に言うと、やったほうがいいですね。
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でもなぁ……5ミリ車高を変えたら、1万何千円も出さないとダメとか、ヒド過ぎませかねソレ。
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んー、まあね。
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5ミリ車高変えてアライメント調整するなんて、セレブ過ぎると思う。
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ま、まあ……。個人的にはミリ単位、1センチ以内ぐらいまでの車高調整ならば、やらなくても問題はほとんどないとは思います。
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じゃあ、3〜4センチぐらい車高を下げたら?
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こういう場合は、明らかにアライメントが大きく狂っています。やったほうがいいです。
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とほほ……。車高を下げただけで、1万円も2万円も追加でかかるとは……。
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アライメントが大きく狂ったまま乗っていると、タイヤにダメージがくる。ローダウン車は、特にです。半月でダメになるとか、あり得ますよ。
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ひええ!
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タイヤ代を考えたら、アラメントが狂ったままのほうが、よほど出費が大きくなる。
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なるほど。
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あとロードノイズもひどくなるし、車も真っ直ぐ走らないし。いろいろな意味で、デメリットが多いです。
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というわけで皆さん、お金がないときに、車高を大きく変えるのはやめましょう。
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そう来るか。
具体的なやり方は、「車高調の正しい調整方法」参照。
こんな車高から
こんな車高に調整したとき
車高調を付けた直後のアライメント調整は“車高”に注意
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少し細かい話になります。車高調を付けてローダウンしたときのアライメント調整は、少し乗ってからのほうがいいと思います。
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なぜですか?
お店では、セットで勧めてくるものなのでは? -
そうなんですが、車高調を付けた時点の車高では乗れなくて(低すぎて)、もう少し上げてください……といったことになりやすい。
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そっか。逆に、もっと下げてください、とかもあるかもしれないし。
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はじめて車高調を付ける初心者なら、なおさらです。1週間以内ぐらいに車高を調整しなおすケースは、けっこう多いので。
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なるほど。
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だから、厳密にやるなら「自分が乗れる車高が定まった時点で」アライメントを取るほうがいいですよ。
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車高調を付けてアライメントまで取ったのに、1週間後に何センチも車高を動かしたら……意味ナシですね。
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それと、組んだ車高調が馴染んでいくことで、付けた直後より僅かながら車高が落ちる、という問題もあるので。
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ほー。
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アライメントが狂った状態で長く走るのは、タイヤが偏摩耗するのでNG。でも車高調を組んだ直後よりは、数日経過して馴染んで、車高もコレで乗れそう! となったタイミングでアライメント調整することをオススメします。
そして自分なりの車高が定まる
四輪測定しても、調整できるのはフロントのみの車は?
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最近の車は、リアの足まわりがトーションビーム式を採用しているケースが多いです。このタイプは、リアのアライメント調整はできません。
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トーションビーム式の車では、アライメント調整をやっても、ムダということですか?
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ムダということはないです。四輪を測定した上で、リアのアライメントも加味しつつ、フロントタイヤを調整しますから。
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ああ。
そういうことなら、意味がありますね。 -
でもフロントの調整も、実質はトー角しか調整できない車も多い。
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……なんかリアトーションビーム式の車は、アライメント調整しても、損した気分になりそうですね。
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ただ、フロントのトー角(車を上から見たときの、タイヤの開き具合)が狂っていると、タイヤが激しく減る。だから重要ではあります。
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そっかー。
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このような事情を考え合わせて、「サイドスリップ調整で済ませる」人も多いです。それなら工賃は、劇的に安い。2000〜3000円のところも多いので。
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なるほど! アライメント調整はやらないで、サイドスリップ調整で済ませる手もあると。
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そうですね。
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ちなみに、アライメント調整とサイドスリップ調整の違いって……。
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四輪のデータを測定して四輪のバランスを取るのが、アライメント調整。サイドスリップ調整は、ただ単にフロントタイヤを前に向ける、というシンプルな調整ですけど、何もやらないよりずっといい。
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トーションビーム式でリアが調整できない車の場合は、足まわりを交換したタイミングで、サイドスリップ調整だけやる、という手もあることを覚えておきましょう。
30プリウスのリアの足まわりの例。四輪独立ではなく、左右輪は1本の車軸(リアアクスル)でつながっている。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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