セパレーションとは? 引っ張りタイヤとの関連性は?
攻めの引っ張りタイヤにまつわるリスクを、改めて掌握しておこう。一番問題になるのは「セパレーション」。文字通りタイヤの内側素材の接合部が剥がれる現象だ。極端な引っ張り方をしたり、ロードインデックス不足も、セパレーションの原因になる。
セパレーションとは何か?
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引っ張り過ぎるとリスクがあると言いますが、具体的にはどんなリスクがあるのでしょう?
●レポーター:イルミちゃん
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一番はセパレーション、でしょうね。エア漏れして外れるリスクなどよりも、現実的にはセパレーションのほうが起こりやすいと思います。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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セパレーション?
……って、なんのことですか? -
タイヤって、一見するとゴムの固まりにしか見えません。しかし中にはいろいろな素材が入っていて、その集合体として出来ています。
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その各素材の接合部分が剥がれてくる現象を、セパレーションと言うんです。
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見て分かるんですか?
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ポコポコっとコブみたいに出っ張って、外から見てすぐ分かるセパレーションもある。でも内部で剥離が起きていて、外からは見えないパターンもありますね。
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そうなんだ。
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タイヤの内外入れ替えをしようとして外したら、中がブクブクって膨らんでいるのもよく見かけますね。
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いずれにしてもセパレーションが起きてしまったら、そのタイヤはもうダメってことですね。
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剥離し始めると、そこから広がっていきますからね。
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セパレーションが起こったら、乗っていて気付けるものですか?
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敏感な人は乗っていて分かると思います。とくに内側が剥離すると、フニャフニャするっていうか。……でも気付かない人も多いんじゃないかな〜とは思います。
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気付かないで乗っていたら、どうなるんだろう?
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材料同士がぶつかっているような状態なので、異常発熱したりする。バーストしやすくなっている状況ですね。
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バーストとセパレーションは違うんですね。
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あるイミでは、バーストの一歩手前の状態と言えます。
ビード部のワイヤーあり、骨格もあり。ゴム以外にもいろいろな素材が入っている
セパレーションが起こる原因
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問題はセパレーションが起こる原因ですが、やはり引っ張りタイヤが悪いのでしょうか?
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極端な引っ張りタイヤは、起こりやすくなるでしょうね。
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やっぱりかぁ……。
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タイヤのショルダー部分は、通常は外側に広がるように動く。でも極端に引っ張ると、逆に反ります。
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この逆反り感こそ、引っ張りタイヤらしさ!……と言う人は多いと思いますが。(私もそう思うし!)
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そうなんですけど、本来は内側から外側にたわむ方向に動くように作っているタイヤが、本来の設計上の動きとは、真逆の動きをすることになるので……
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それは……。
かなり無理がかかりそうですね。 -
タイヤメーカーに言わせると、これがセパレーションが起こりやすくなる原因のようですね。
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氏家研究員の言う極端な引っ張りって、どんなマッチングですか?
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例えば215/35-19を、9.5Jや10Jに組むようなケース。そうすると、こういう逆の動きが顕著になります。
引っ張るとショルダーが逆反りする
ロードインデックス不足も原因
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もうひとつは、ロードインデックスの問題ですね。
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ロードインデックスとは、タイヤ1輪あたりが支えられる重量を示した数値でしたね。
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でも20インチの30扁平とかは、ロードインデックスが不足した状態で履くのが前提のようなところがあります。
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「20インチタイヤの30扁平と35扁平を比較」で、出てきた話ですね。
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タイヤメーカーいわく、そもそもタイヤの支えられる荷重能力を越えたような使い方をしていると、それに耐えきれなくなってセパレーションが起こる……と。
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その点では扁平率の低い、低車高に有利なタイヤほど不利ってことか。
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そうですね。例えば20インチの30扁平を重量級の車に履かせていると、明らかにロードインデックス不足。するとセパレーションが起こりやすくなる、という理屈です。
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では……上のJラインのデモカーの履き方が、まさにセパレーションの原因になる?
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う〜ん。でもセパレーションは、引っ張った車が全部なるわけじゃない。ウチのデモカーも、ルッチーニを履いてからは起きていない。ただ、うっかりドン!と段差を踏んだタイミングとかでは起こりやすい。
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そのへんは、運転の仕方によっても変わりそう……。
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それと、タイヤの荷重能力が足りないせいで起こるセパレーションもあるけれど、空気圧不足で起こるセパレーションもあるんですよ。
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空気圧不足でも起こるんだ。
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そうです。空気圧不足の状態で走行していてタイヤが壊れるのは、ドレスアップカーに限ったことじゃないです。
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そうなんだ〜。
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とはいえ、車高を下げるために外径の小さいタイヤを履くのは、本来の指定サイズより負荷能力の低いタイヤを履くということ。
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それは、確かに。
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そんな状況で空気圧が下がると、なおさらセパレーションは起こりやすくなります。
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外径の小さいタイヤを履くなら、空気圧管理は重要ってことですね〜。
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特にタイヤの空気圧不足によるセパレーションの場合は、その先にバーストが待っているので要注意です。
重い車に薄いタイヤだと、ロードインデックスが不足する
セパレーションとエア漏れはまた別問題
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冒頭で、引っ張りタイヤはエア漏れもしやすいという話もありました。それは、セパレーションとはまた別のリスクですよね?
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別ですね。エア漏れの場合は、気づかないとタイヤが外れます。
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こわっ。
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でもいきなりバーンって外れるわけではないのです。外れる前にエア漏れが起きるんです。
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順番があるのか。
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まずプシューっと抜けてきて、内圧が下がってテンションが下がる。すると負荷がかかったとき、抵抗できずにビードがポンっと外れてしまうわけです。
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なるほど、空気がなくなることで、ビードが落ちてしまうんだ。
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サインとしては、エアーが抜けると最初は滑りはじめる。そこですぐ車を止めないといけない。でないと外れます。
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今回はちょっと恐い話でしたが、引っ張りタイヤや超扁平タイヤを履く以上は、こういう話は知っておいたほうが良さそうです。
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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