ラチェットとはなにか？ を初心者向きに解説すると…

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ラチェットハンドルは知っていても、改めて「ラチェットとはなに？」と問われたら、即答するのはけっこう難しい。ラチェットの意味がわからなくても工具としては使えるけれど、読むと「へ〜！」がある余談コラム。

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  「別メーカーのソケットとラチェットを組み合わせても（相性）問題はないの？╱後編」の続き。

  ●レポーター：イルミちゃん

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  ふーむ……。

  ●DIYラボ別館 ユキマちゃん

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  あれ、どうしたのユキマちゃん？

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  いや、前回までの講習で差込角を極めた私としては、そろそろ〈しぶいちのコマとラチェット〉を買いに行こうかと思っていたんだけど……

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  無理にツウぶらなくていいのよ？

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  で、KTCのラチェットハンドルの公式ページを見てみたら、説明を読んでもよく分からないことがいっぱい書いてあるのよ。

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  なになに……「36枚ギア、送り角度10度のスタンダードタイプ」。

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  ギアってなに？

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  こっちには「左右のクロウを一体化した一体式クロウにより強度アップ」とも書いてあるね。

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  だから、クロウってなによ？

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  私に聞かれても困る。
  KTCの先生に聞きましょう。

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  ギアは歯車、クロウは爪（ツメ）のことですね。

  ●アドバイザー：KTC トリー研究員

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  ナルホド。

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  なるほど……じゃないわよ、それはただの日本語訳じゃないの。

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  ふむ。
  それもそうか。

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  ラチェットハンドルに、歯車とかツメとかなんの関係があるのサ。

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  大アリですね。というか、ラチェット機構は歯車とツメとバネの組み合わせでできているものですので。

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  ラチェット機構……。

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  ちなみに、ラチェットを日本語でいうと爪車（つめぐるま）です。

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  ラチェットの日本語訳があるのか。

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  もちろんありますよ。ほとんど使われていない言葉ですけどね。

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  ラチェットとは爪車のことである。……うん。全然ワカラン。

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  ……。

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  せっかくですから、初心者向きにラチェットとは何か？ というところから解説していきましょう。

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  工具の世界では「ラチェット」というと、「ラチェットハンドル」のことを指しているのが普通ですよね。


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  しかし、正確にはラチェットとは工具の名称ではなくて、機械要素のひとつです。

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  機械要素？

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  「テコの原理」などと同じってことです。

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  へえぇ。
  ずいぶんと意味が広くなりますね。

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  ラチェット＝ラチェットハンドルではないんだね。

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  そもそもラチェット機構が使われているのは、工具の世界だけではありませんから。

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  ほう。

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  工具以外のなにかで「ラチェット」なんて聞いたことないけど？

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  いやいや、意外なほど身近なところで使われていますよ。

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  っていうと、たとえば？

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  何も知らない人にラチェットとは何かを説明するときに、私がよく持ち出す話題が、自転車のペダルです。

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  自転車のペダルとラチェットがどう関係あるの？

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  自転車のペダルの動き方はラチェットそのものなんですよ。

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  …はい？

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  自転車のペダルは、進む方向にはギアが噛むけれど、逆方向に回してもカリカリカリ……となって、後ろには進みませんよね。

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  ……そういえば自転車ってバックできませんね。

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  一方向にしか回せず、逆方向に回そうとするとロックするラチェット機構だからです。この場合はロックする方向が「前進」ですね。

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  なるほど。バック方向はロックしないから空転するんだ。

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  自転車のペダルは、前に回すとロックした状態になり、さらに回そうとするからタイヤが回るわけです。

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  つまり、自転車をこいでいるときって、ラチェットハンドルでねじを締めたり、ゆるめたりしているときと同じことが起きている!?

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  そういうことになりますね。

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  でもなんで自転車にラチェット機構が必要なんでしょう？

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  自転車で早回し……って意味わかんないよね？

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  同じラチェット機構でも、それを盛り込んでいる理由が違うんです。工具の場合は、ねじを締め込んで、逆方向にまわすときに空転させることで早回しを実現していますが……

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  ふむ。

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  自転車にラチェット機構が必要な理由は、こぎ続けなくてもいいようにするためです。

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  ん…？

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  ペダルの回転をとめても、タイヤは回転して自転車は進んでいきますよね。

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  十分に加速したら、ペダルをこぐのは止めますね。

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  そのために「逆方向は空転する」ラチェット機構が必要なんですよ。

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  そういうことか！

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  「ペダルをこいで前に進む」だけが目的なら、ラチェットはいらないのです。しかし、それだと、ずっとこぎつづけないといけません。

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  シャーって休む時間を作れないんですねぇ。

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  では、ラチェットハンドルの「カリカリカリ…」っていう音と、自転車でペダルを止めたときの「シャァァァー」っていう音は同じなんだ。

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  そうです。なぜラチェットでは音が出るのか、という点は、爪車（つめぐるま）の構造が分かれば理解できます。