固着したねじの外し方として、ドライバーを叩くのは正しいのか？

ドライバーを叩く使い方がある。固着したねじの外し方として、叩くのもやむを得ないのか。それともやはり、ドライバーは叩くべきではないのか。ドライバーの正しい使い方ではゆるまない、固着ねじに対峙したときの正解はいかに。

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  「ドライバーの正しい使い方」の続きですが、ドライバーを叩く…という使い方は、正しいのか間違っているのか、ご存じでしょうか？

  ●レポーター：イルミちゃん

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  冒頭の写真（↑）で、ハンマーで叩いているのは普通のドライバーではなくインパクトドライバーという製品です。これなら問題ありませんが、普通のドライバーをハンマーで叩くのはよくないです。

  ●アドバイザー：KTC トリー研究員

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  しかし、「ドライバーを叩く」のは、けっこう一般的に行われているコトでは？

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  そうですね。よくないけど、実際のところ現場では使われている手法であり、実用的なテクニックではあります。

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  よくない方法なのに、実用的？？？

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  ねぇねぇ、叩くとなんかイイコトあるわけ？ なんで叩くのかしら？

  ●DIYラボ別館 ユキマちゃん

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  それは、固着したねじの外し方（ゆるめる方法）としては、確かに有効だからですよ。

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  叩くとゆるむの？

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  プラスドライバーのお尻をコンコンと叩くと、その衝撃で、ねじが噛み込んでいる部分にわずかな隙間ができて、ゆるんだりすることがあるんですよ。


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  だから、軸が貫通しているタイプのドライバー（貫通ドライバー）の場合は、ハンマーで叩いたりするのです。

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  でも、よくないっていうのは？

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  まず、安全面から言うと非常によくないのです。

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  なんで？ ハンマーで手を叩きそうだから……じゃないわよね。

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  工具の作りの話にも関わってきますが、工具の硬さは、目的に応じて部分的にいろいろ変えているんですよ。

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  工具の硬さ……ですか？

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  ドライバーでいうと、一般的な工具より硬度が高めです。


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  ほー。工具って、全部同じ硬さではないんですね。

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  ドライバーの先端は、押し回しする都合上すり減りやすいのです。「耐摩耗性を上げる」という意味で、硬度を上げています。

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  なるほど、なるほど。

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  しかし、基本的に、物質における「硬さ」と「粘り強さ」は反比例なんですよ。ここが問題点。

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  ……なんのこと？
  （今日は化学の授業？）

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  硬いものほど、モロいってことです。

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  硬いのにモロいの？

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  例えば、〈ガラス〉と〈木〉と〈紙〉を比較すれば分かります。一番硬いのはガラスですが……

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  ……割れやすい。

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  そうです。木材だと硬さはそこそこですが、比較的弾力があってガラスよりは割れにくい。

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  確かに。

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  それが紙となると、フニャフニャだけど、折り曲げたって割れないじゃないですか。

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  紙が割れないって当たり前過ぎて、そんなふうに考えたことはなかったけど……

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  言われてみれば、硬いものほどモロいと言えますね。

つまり「硬度を重視しているドライバーの先端」は、いっぽうで欠けやすいということ



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  上の写真はそもそもドライバーとして使っていない時点でNGですが、このような使い方をするとハンマーで叩いた衝撃で、先端が欠ける可能性が高いのです。

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  ……そ、そういうことか。

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  あたしのネプロスちゃんが欠けたぁ!! o(≧д≦)oとか、〈妄想〉するだに恐ろしい。持ってないけど。

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  工具も壊れるし、それ以上に、欠けた破片が目に入ったりしたら大変です。

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  ……確かに。

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  だから工具メーカーとしては、普通のプラスドライバーを叩くのはNGという回答になります。

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  貫通ドライバーなら、叩いていいと思っている人が多そうですが……

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  叩いていいのは、冒頭で紹介したインパクトドライバー（ショックドライバー）だけですね。


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  そんな工具もあるのか。

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  インパクトドライバーは、ハンマーでお尻を叩くと、叩いた力を回転する力に変えるので、固着したねじには効果的な工具です。



KTCのインパクトドライバセット。錆付いて固着したねじをゆるめるのに、効果的な工具。

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  ……まあ、それを持っていれば問題はないのですが、普通のドライバーしかない状況で、固着したねじに直面したらどうするか。

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  私にいい考えがあるんだけど、聞いてくれるかしら？

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  ドライバーを叩くリスクは分かったけど、そうはいっても、固着したねじは外してナンボ。それが現場でもある。

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  それはまあ、そうですね。

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  ユキマちゃんにしては鋭いこと言うけど……〈策〉があるの？

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  私のネプロスちゃん（※妄想）は叩けないから……ホラ、あんたの安物ドライバー貸しなさいよ。

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  ……ユキマちゃんの策なんて、どうせそんなことだろうと思った。

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  ……つまり、工具を壊す覚悟はあるということですね。

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  そういうことね！

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  自分のを叩きなさいよ!!

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  しかし、ドライバーを叩くと、そのときには気づかなくても、小さなクラック（亀裂）が入る可能性もあります。

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  ……。

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  別の機会にパキンと折れて、その弾みで怪我するかも知れない。

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  私が怪我したらどうするのよ？

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  ……なら、使い捨てればいいのよ。今、この固着ねじを外すためだけに、犠牲になってもらう。

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  なおさら自分のでやりなさい!!

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  工具を壊す覚悟があったとしても、メーカーとしては安全第一なので、他の方法を取っていただいたほうが……。

安全メガネもしたし、手袋もしましたよ、トリー先生



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  そこまでしてドライバーを叩く意味、あるんですかね？ この人の場合は、ただ叩きたいだけですが。

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  KTCとしては推奨できませんが、手持ちの工具で、限られた時間で、どうしても作業を進めないといけないから「叩く」というのは、効果はあります。だから意味がないわけではありません。

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  ……ここまでするのであれば、他の手段を取ったほうがいいと思うんですケド？

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  ……まあ、本当はそうなんですが、何が正解かの判断は、現場の状況による、ということなんでしょう。

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  リスク覚悟でどうしても叩くならせめて、力任せにガンガン叩くのではなく、コンコンと軽く叩く程度にしておきましょう。