アクリルヘッドライト加工方法(第10回)
乳白色アクリル板を裏に使う! プロ加工者の拡散テク
乳白色アクリル板を使って、光を美しく拡散させるテクニック。ブラスト加工した透明アクリルに乳白色アクリルを重ねる、いわゆる「アクリル積層」だ。プロの加工者が実験を重ねてあみ出したやり方だが、DIYでもチャレンジできる。
透明アクリル板に乳白色アクリル板を重ねる
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前回はヘッドライトのインナーをくり抜いて、アクリルを埋め込むための穴が開きました。
●レポーター:イルミちゃん
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あとは、アクリル板をハメ込んでいけばいいんですね〜。固定はどうするのかな?
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その前に、まだやることがあります。裏に重ねるための、乳白色アクリル板を用意しないと。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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はい?
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アクリルをね、もう一枚裏に重ねるんですよ、球屋のアクリル加工では。
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あのぉ………、
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どうかしましたか?
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以前に森田研究員は、「乳白色アクリルより透明アクリルブラスト加工のほうが光がキレイに導光する」って言ってましたよね?
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そうですね。
前に実験で見せた通り(↓)ですよ。 -
表面に見せるのは、あくまでも「透明アクリル板をブラスト加工したもの」ですよ?
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じゃあ、なんで! 今さら乳白色アクリル板が出てくるんですか?
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表には使わず、透明アクリルの裏にピタっと重ねて使うんですよ。
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ええ〜っ!!
何コレ。 -
アクリル積層ですね。
コレは重要なポイントです。 -
こんなことしても……ヘッドライトの表に見えるのは、上側の透明アクリルだけじゃないですか。
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そうですね。裏に乳白色アクリルを重ねる目的は、「透明アクリルをキレイに面発光させるため」です。
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ほえ〜。
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いろいろなアクリル面発光を試してきた中で、一番キレイに、ムラなく光るのはこの手法だったんですよ。
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そ、そうなんだ。さぞかし鬼のように試しまくったんだろうな。ドMだから。
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僕らのコダワリとして、「アクリルを使う以上は、とにかくLEDの粒々感を出したくない」という想いが強くあります。
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そう言えば、森田研究員は以前からそこにこだわっていましたね。
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光源とアクリルの距離を取るという手もありますが、車のヘッドライトって光源の位置が制限されます。粒々感を出さないのは、意外とカンタンではありません。
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アクリルを使ったはいいけれど、光源が隠し切れない状況になりやすい?
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そうなんです。それで試行錯誤した結果が、「乳白色アクリルでいったん拡散させた光で、透明アクリル板(ブラスト加工)を光らせる」手法なのです。
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なんだか、遠回しな光らせ方のようですが……、
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その遠回りが、光源を感じさせないポイントってことですね。
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でもそれによって、明るさが犠牲になりませんか?
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光源が同じなら、乳白をかませる分だけ暗くはなりますよね。でも、そもそもアクリル面発光って、明るさはそれほど重要でしょうか?
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ああ、なるほど。
確かに実用照明とは、意味合いが違いますね。 -
そもそもアクリルを使う意味を考えたら、「明るい」より、まず「キレイに面発光している」ということが何より重要だというのが球屋の考えです。
乳白色アクリルと透明アクリルブラスト加工の導光比較
詳しくは「アクリル板の種類。LEDで光らせるならどれ?」参照。
こんな風に使いたい
第一拡散のために乳白色アクリル板を使う
乳白色アクリル板は3ミリ厚を切り出す
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というわけで、表に見せる透明アクリル板よりも、僅かに大きいサイズで乳白色アクリルを切り出します。
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球屋ではレーザー加工機を使っていますが、DIYでやる場合は「アクリル板のきれいな切り方。曲線も切れる!」を参考にしてください。
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ほとんど同じ大きさに近いですね。
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あまりに大きいと光源のLEDを仕込むスペースがなくなったりもするので、乳白色アクリルは透明アクリルより僅かに大きい程度でいいのです。
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フムフム。
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なお、透明アクリル板は5ミリ厚を使っていますが、乳白色アクリル板は少し薄い3ミリ厚を使っています。
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乳白アクリルが3ミリ厚なのは、なぜ?
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後方スペースに限りがあるので、厚みを抑えたい。それと光の拡散用途なら、3ミリ厚で事足りるからですよ。
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乳白アクリルがもっと厚かったらどうなる?
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背面の乳白色アクリル板が分厚すぎると、光が飛ばなくなってしまう。いろいろやった結果、3ミリが一番いい具合という結論です。
最初に切り出した透明アクリルデータを元に……
少しだけ元データより大きい型データを用意
乳白色アクリルをレーザー加工機で切り出す
乳白色アクリル板が切り出せたところ
乳白色アクリルを熱で曲げる
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切り出せたら、乳白色アクリルもインナー形状に沿って曲げます。そうしないと、ピタっと背面に重ならないので。
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3ミリ厚なので、最初に曲げた5ミリ厚の透明アクリル板よりも曲げやすいですね。
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次は、「アクリル板の固定・接着にコーキング剤が向きな理由」に続きます。
まずは透明アクリル板をハメこんでおき……
乳白色アクリルをヒートガンであぶる
※詳しいやり方は「アクリル板のきれいな曲げ方」参照。
乳白色アクリルが柔らかくなったら押し当てて曲げる
この記事の実践アドバイザー
球屋・田中宏信サン。森田研究員に輪をかけたドM。働き者。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
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