デッドニング完全ガイド
ドアデッドニング施工方法②╱サービスホールの型取り
ドアデッドニング方法を、実際に施工しながらガイドする続き。そもそもドアをデッドニングする最大の目的は、ドア内部の鉄板の穴(サービスホール)を、制振材で塞ぐこと。この作業を、できるだけ効率よくムダなくやる。
ドアのサービスホールを制振材で塞ぐ下準備
-
「ドアデッドニング施工方法①╱ドア内張りの外し方」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
-
ドア内張りが外れると、ドア内部の鉄板がムキ出しの状態になります。
(↓)●アドバイザー:エーモン 中塚研究員
-
鉄板が二重構造になっているのが見えると思いますが、奥の鉄板(車体外側)がアウターパネル、手前の鉄板(室内側)がインナーパネルです。
-
上の写真の通り、手前の鉄板がインナーパネル。カン違いしないようにしましょう。
-
……で、初期状態だとインナーパネル側には防水ビニールがかかっています。
-
デッドニングで制振材を貼るから、このビニールはいらないんですよね。
-
いらないんですが、捨てる前に、サービスホールの型取りに利用しましょう。
-
サービスホールというのは……
-
ビニール越しに、インナーパネルに開いている大小の穴が見えるでしょう。これがサービスホールです。
-
大きいのから小さいのまで、全部で5個ある。
-
穴の数や形は、車種によっていろいろです。
-
フムフム。
-
この穴を制振材(制振シート)で塞ぐのがドアデッドニングの目的なので、まずはサービスホールの形を型取りしていきます。
ドアのサービスホールの型取り方法
-
ちょうどドア鉄板にかかっている防水ビニールを利用すれば、型取りの紙などを用意しなくても型取りできます。
-
なるほど。
-
防水ビニールの上から、こんなふうにマジックで線を書いて、サービスホールの形状をなぞるんです。
-
このとき、サービスホールのフチよりも3センチぐらい外側に線を引いていきます。
-
制振シートを鉄板に貼り付けるときの「のりしろ」ですね。
-
そうです。ただし、余白が3センチではダメなケースもありますね。
-
と言うと?
-
今回のモデル車(スペーシア)の場合がまさにそうなんですが、内張りに凹みがあって、それが裏側に出っ張っている箇所があります。
-
右上の肘掛けの部分に注目してください。凹んでいるのが分かりますか?
-
ホントだ。
真っ平らではない。 -
こういう箇所は、裏側の防水ビニールにも凹み(逃げ)があったりするんです。
-
防水ビニールも、凹ませてあるんだ。
-
スペーシアのような軽自動車は、室内空間を広くとるためにドア鉄板の作りも薄い。そのため、こういう凹みポイントが出てくる可能性が高いです。
-
む。
ということは…… -
サービスホールを制振シートで真っ平らに塞いでしまうと、干渉してしまいます。
-
ドア内張りが戻せなくなってしまう!
-
だから、こういう箇所は、内側に凹ませながら制振シートを貼る必要があります。
-
そんな器用なこと、DIYでできるかな。
-
難しくはありません。ただ、ヘコませる分だけ面積が必要になるので、サービスホールの実寸より大きめに制振シートを切り出す必要があります。
-
そういうことか。
-
ですので、こういう場面では、型取りの線はかなり余力を持って外側に大きく描きます。
-
ただ、端のほうはそもそも防水ビニールに余力がなくて線がかけない場所も出てきます。
-
これ以上描いたら……鉄板に型取り線を描くことになってしまいます。
-
この先は、防水ビニールのフチを目安に、それよりも大きく制振シートを切り出す、と覚えておけばよいでしょう。
-
……そのことを忘れそうな人は、型紙を足して増設するなりしておきましょう。
注目!
この線の先には、防水ビニールがない!
制振シートの型取りにおける注意点
-
この作業を繰り返して、5個のサービスホールを型取りすればいいわけですね。
-
なお、律儀にすべての穴の形に型取りしなくても、小さな穴なら複数まとめて貼ってしまっても大丈夫です。
-
あ。
②と③はいっぺんにいったのか。 -
制振シートが足りそうなら、まとめて塞ぎにいくのもアリです。
-
それから、内張りピンが差し込まれる穴は塞いではいけませんが……
-
内張りが戻せなくなる。
-
ただ、中にはサービスホールのフチギリギリのところにピンの穴がある場合もある。
-
これ、内張りピンの穴をよけようとすると、制振シートののりしろがなくなってしまいますね……どうしよう?
-
そういう場合は、「制振シートを貼ってから穴を開ける」方法もあるので、ひとまず穴を無視して型取りしておきましょう。
✔ 細かく切り出すほうが、必要な制振シートの総面積は減らせるケースが多い。
✔ 制振シートが足りなければ、単品でも買える。
型取りのラインに沿って防水ビニールを切り出す
-
型取りができたら、防水ビニールを剥がす?
-
いや、剥がすとブチルゴムが付いてきてその後の作業がやりにくくなるので……
-
ムムム。
-
可能なかぎり、車の鉄板に付けたままの状態で、サービスホールの型を切り出したほうが作業性がいいです。
-
なるほど。
-
最初はカッターで切れ込みを入れますが、奥の鉄板を傷付けないよう、指でビニールをつまんで、浮かせて、刃を入れます。
-
そのあとは、ハサミでラインに沿ってビニールをカットしていきます。
-
切り出せた~!
-
ここで、ビニールが切り出せたときの重要な注意点!
-
なんですか?
-
裏表が分からなくならないように、書いておきます。
-
それな。
-
制振シートには表裏がありますので、逆向きに型取りしてしまうと大変なことになります。
-
その点は注意しながら、サクサクと切り進めましょう。次は一番デカイやつを……
-
ちょっと待った!
-
な、なんですか?
-
その大きいサービスホール、端のほうがブチルゴムで留まっているでしょう?
-
……ホントだ。
ブチルゴムで密着している。 -
ここからはうかつに剥がさず、ブチルゴムを処理しながら作業を進めていきます。
-
……いよいよ、ブチルとの戦いが始まります。
DIY Laboアドバイザー:中塚雅彦
カーDIY用品メーカー・エーモン広報担当で、エーモンの顔と言える人物。端子や配線コードの仕様など細かいところまで深い知識を持っているので、DIYラボでは「電装DIYのきほん」に関する記事を担当。中塚ハカセ、とも呼ばれている。
関連記事
- エーモン(オーディア)の新型デッドニングキットを徹底解説
- デッドニングとは? その目的を初心者向きに解説すると…
- デッドニングとは?(後編) スピーカー周りをデッドニングする目的
- デッドニングに必要なもの(道具・工具)は?
- ドアデッドニング施工方法①╱ドア内張りの外し方
- ドアデッドニング施工方法③╱ブチルゴムの除去はどうやるのか?
- ドアデッドニング施工方法④╱アウターパネルへの制振材の貼り方
- ドアデッドニング施工方法⑤╱アウターパネルへの吸音材の貼り方
- ドアデッドニング施工方法⑥╱サービスホールの塞ぎ方
- ドアデッドニング施工方法⑦╱大きなサービスホールを塞ぐには?
- ドアデッドニング施工方法⑧╱ドア内張りの「カタカタ異音」防止策
- ドアデッドニング施工方法⑨╱インナーパネルの制振と補強
- スピーカー周りのデッドニング方法①╱スピーカー背面の吸音と制振
- スピーカー周りのデッドニング方法②╱スピーカーの防音
- プラスチック専用の制振材や吸音材。デッドニングは鉄板だけじゃない
- ドア内張りパネルのデッドニング方法
- エーモンがカーオーディオブランド・Aodea(オーディア)を再始動!
- 車の「スピーカー交換」入門
- バッフルボード(インナーバッフル)とは?
- 車のスピーカー交換方法╱純正スピーカー(リベット)の外し方
デッドニング完全ガイド〈ドアデッドニング編〉
デッドニング完全ガイド〈スピーカー周り編〉
デッドニング完全ガイド〈ドア内張り編〉
その他