>>> バネ交換ガイド(第5回)
IDが合わないバネを付ける、車高調の「ID変換」加工
車高調のバネを換えたいのに、ID(内径)の合う交換用のバネがない……そんなとき、車高調の対応バネの「ID変換」をするという技がある。IDが合わないバネでも合わせにいく、プロの話を聞いた。
車高調のバネのIDを変換する、という発想もある
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「バネ(スプリング)のIDってなに?」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
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前回は「バネのID(内径)が合っていないと、車高調のスプリングシートには載っかりませんよ~」という当たり前の話をしましたが、今日はちょっと応用的な話です。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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ウラ技でしょうか♪
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車種によってはバネのIDが特殊で(太すぎて)、交換用のバネがなかなかない、と言いましたよね。
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リアバネにそのパターンが多いとか。
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そう。J-LINEにも、「自分の車高調にはID80のバネが付いていますが、都合のいいバネが見つからなくて」なんていう悩み相談が来たりするんですが……
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まさしく駆け込み寺ですな。
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バネはID70を超えるサイズになると、選択肢がなくなってくる。ID70のバネならいっぱいあるんですけどね~。
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でもID80のバネが付いた車高調だとすると、ID70のバネは狭くて入りませんね。スプリングシートの壁にぶつかってしまう。
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そこで、「スプリングシート(ロアシート)をJ-LINEまで送ってくれますか?」っていう話になるんです。
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そんなの、送ってもらってどうするの?
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スプリングシート側を、70Φに加工してしまうんですよ。
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そんなズルイ技があるのか〜。
スプリングシート(ロアシート)を加工して、バネのIDに合わせる
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全部の車高調でできるとは言えませんが、状況によってはスプリングシート側を加工すると、バネが載せられるケースもあるんですよ。
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どういう加工内容なのでしょうか?
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これは車高調のリアアジャスター(↓)ですが……
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このアジャスターのスプリングシート(ロアシート)に、バネが座っているという構造です。
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フムフム。
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このスプリングシートの外径に注目してみます。ちなみに外径はIDではなくOD(オーディー)と言います。
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そんな言い方もあるんだ。
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例えばこのスプリングシートの、出っ張り部分の外径(OD)は80ミリです。
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つまり、ID80のバネが付けられる車高調、ということですね。
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ここから、スプリングシート側を削りこんで外径を小さくするのです(※バネ側から見るとID変換だが、実際にはシートのOD変換ということ)。
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ほえー。でも1センチも削れるほどの余白はないのでは?
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いや、5ミリ削り込めれば、直径は10ミリ小さくなりますから。
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あ、そっか。
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もちろん、もともと壁が薄っぺらで、“削りしろ”がないようなスプリングシートではできません。
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フムフム。
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でも削り込めるだけの余力(厚み)があるスプリングシートなら、対応IDを変換することが可能なんです。
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バネの上側の問題が残るのでは?
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そうですね。上側はID70のバネが入る、という前提が必要です。
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そっちもチェックしておかないとダメですね。
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ハイ。でも上側(フレーム側)はだいたい細いんですよ。そんなに太くなっている車はあまりない。
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フムフム。
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上側だけで見ると、ID70のバネでクリアできる車種が多いです。問題は下側のスプリングシートなんです。
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アジャスターが上側に付くタイプ(↓)の車種もありますが、ネックになるのがスプリングシート(※この場合はアッパーシート)のID、という意味では同じです。
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だからスプリングシートを加工するんだ~。
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この加工は、J-LINEではときどきプロショップから依頼を受けて行っていますよ。
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まさしく加工屋の仕事って、感じですねぇ。
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ちなみに、その逆バージョンの話もあるんですよ。
寸法表記のマメ知識
ID(アイディー)は英語「Inner Daimeter」の略で「内径」
OD(オーディー)は「Outer Diameter」の略で「外径」
IDが太いバネを座らせる場合
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反対に、スプリングシート(ロアシート)が小さすぎて、バネが載っからないパターンだとします。
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バネのIDが、シートに対して太すぎるってことですね。
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その場合は例えば、「IDを60Φにして、ODを70Φにする変換カラー」のような部品を作って、はめこむんです。
※「カラー」とは、部品と部品の間に入れ込む、スペーサー的なもの。
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そのカラーを、J-LINEで製作するのか。
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そうです。スプリングシート自体がアルミ製なので、アルミで作ります。
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ワンオフの変換スペーサーみたいなものですねぇ。
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ただし、きちんと入るようにカラーを製作するためには、数値を聞くだけではなく、現物(スプリングシート)を送ってもらう必要はありますけどね。
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鉄とアルミの職人の手にかかれば、何でもアリですなぁ。
✔ ただし、スプリングシート(ロアシート)を削る加工よりも、ゼロからカラーを製作するほうが工賃は高くなる。金額はケースバイケースなので、考えている人はJ-LINEに相談してみよう。
※J-LINE TEL:022-367-7534 または、お問い合わせフォームから。
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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