車検に通るデイライトの条件。新保安基準(2016年10月改正)対応
車検に通るデイライトの条件は、保安基準の改正(2016年10月)でできた新ルール。外装の光モノとしては、比較的一般ウケして親しまれているデイライトだが、車検のルールは、思いのほかシビアな面がある。3回の連載に分けて、詳しく解説していこう。
2016年10月 保安基準の改正で「デイライト」専用ルールができた
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車検に通るデイライトの条件を教わろうと思います。
●レポーター:イルミちゃん
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……デイライトですか。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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あれ? なんかテンション低いですね。もしかして、デイライト嫌いなんですか?
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いやいや、そうじゃなくて! 後付けの社外品に関しては、けっこうシビアな話になるかも知れないので。
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確か、2016年に「デイライト」の基準が新しく設けられたという話を聞いたのですが……?
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ハイ。2016年10月の保安基準の改正で、明確に「デイライト(昼間走行灯)に関する決まり」が作られました。
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日本語では「昼間走行灯」って言うんですね。
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昼間から点灯するランプ、ですから。
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それ以前は、デイライトっていう規定がなかったんですね。
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そうですね。だから、日本では「その他灯火類」の扱いになっていました。
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例えばバンパー開口部にLEDを付けてデイライトにする技は、以前から定番カスタマイズとして存在していましたが……
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こういうのは、法規的には「その他灯火類」の枠組みでした。で、その他灯火類の場合は、300カンデラ以下というルールがありました。
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だから日本のデイライトは、総じて暗いものしか作れなかったんですよね。
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今回新しくなったデイライトの基準では、明るさは400カンデラ以上〜1440カンデラ(※)以下となりました。
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300カンデラ以下だったのが、1440カンデラ! まったく次元の違う明るさですね。
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そうですね。ぱっと見にはフォグランプに近い明るさに感じるレベルです。
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昼間の存在感をアピールするためのデイライトと考えれば、明るさが必要ですもんね。
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その他灯火類の明るさでは「昼間はちょっと暗いかな」、というのはありました。
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ようするに、明るいデイライト解禁〜!! なんですよね。コレは!?
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しかし、それは「デイライトとしての条件を満たせば」ということですので。問題はここからです。
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もしかして……。
そのハードルが高い!? -
いろいろな意味でね。まずは、保安基準のおさらいからいってみましょう。
✔ ひとくちメモ
日本のデイライトの法規は欧州のルールに沿ったものになっているが、日本の保安基準上では1440カンデラ以下、と書かれている。なお、欧州のデイライト規格の最新版では最大1200カンデラに改正されているため、近い将来日本の法規上も1200カンデラが上限となる可能性がある点は注意。デイライト(昼間走行灯)の色は白のみ
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まず、デイライト(昼夜走行灯)として認められる色は、白のみです。
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これまでの「その他灯火類」扱いだった時代のデイライトって、白または青みたいなイメージがありますが……
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「その他灯火類」の色の規定は、赤が全面的にNGで、リアについてはアンバー(橙)や白も禁じていました。しかし、それ以外の色ならOKだったので、青でも白でもよかったんです。
※詳しくは「その他灯火類の色ルール」参照。
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緑でもいい?
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ハイ。「その他の灯火類」の枠組みならば。まあ、無難にカッコいい白と青が定着したと思われますが。
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ふむ。しかし新基準のデイライトは、白以外はすべてがNGなんですね。
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そうです。
あくまでも白色範囲に入っていないといけません。 -
出たな白色範囲。それって何ケルビンですか〜? という疑問を持つ人も多いと思うんですが……
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ケルビン数では厳密な白色範囲を定義できないので、その点は注意が必要ですが、目安でいうと、白色範囲の下限は電球色なので3000ケルビン程度。上限は、7000ケルビンを超えないあたり(6000ケルビン台)です。
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いずれにしても、ケルビン数が上がるほど青白っぽくなり、検査員によっては「白ではなく青だ」と判定される可能性が高まります。
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その問題点はヘッドライトやフォグランプの白色範囲と同じですね。
例:ギリギリクラスの6850ケルビン
夜間は、消灯しないといけないが…
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新たに設けられたデイライトの新基準では、昼間の明るさが大幅にアップしましたが、ヘッドライト点灯時(あるいはフォグランプの点灯時も)は消灯または減光(※)させないといけないことになっています。
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カンデラが上がっているから、そのままだと夜間は眩しすぎますよね。
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夜にヘッドライト、スモールランプ、またはフォグランプを点灯させるのと連動して、デイライトを消灯させたり減光させたりする、回路の仕組みが必須です。
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それと、点滅しているようなデイライトは認められませんよ。
✔ デイライト(昼間走行灯)の法規は「消灯」の一択だが、ここでいう「減光」とは、「夜間は、〈その他灯火類〉として300カンデラ以下で点灯させる」という考え方(解釈)によるもの。
✔ ひとくちメモ
スモール連動で消灯・減光などの仕組みは、リレーを使えば作れる。デイライトの高さと左右位置に関するルール
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次は、デイライトの取り付け位置についてです。
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まず、高さ。ランプの下フチが地上から250ミリ以上、上フチが1500ミリ以下。かつ、ヘッドランプ上端より下側に入っていないとダメです。
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デイライトのほうが、ヘッドライトより高い位置にあるのはNGなんですね。
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次に、横方向。幅が1300ミリ以上の車の場合は、左右のデイライトの間が600ミリ以上開いていないとNGです。
※幅が1300ミリ未満の車は、400ミリ以上。
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つまり、あまり真ん中に寄せてデイライトを取り付けてはダメ。
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そういうことですね。
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デイライトっていうと、ナンバーのすぐ両脇に付けるイメージもありますが? これは開きが足りていればOKってことかな。
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しかし、車種によってはポン付けで取り付け要件を満たすのは難しいと思われます。上の例でも、開口部に取り付けはできず、樹脂部分を切って埋めるしかなさそう。
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ウ〜ム。ちょうど付けられそうな位置に付ける、というわけにはいかないのが難しい。
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例えば開口部ではなく、樹脂の部分を切るとか、そういった加工をしないと、法規で認められている範囲内に付けられないケースがあるでしょうね。
250ミリ以上で…
1500ミリ以下
ココでも余力がない!?
600ミリ以上開けると車体にかかってしまう。(※ハスラーの全幅は1475ミリ。600ミリ開けなければいけない)
ランプ形状に決まりはないが、面積は決められている
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デイライトの形は、横長タイプもあれば、丸型もありますが、そのへんのルールはどうなっているのでしょう?
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面積のルールがあるんです。
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これは、合計面積です。複数並べて付けるような付け方の場合は、合計の面積が問われます。
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その範囲内であれば、形状はどのようにも作れることになりますね。
✔ ひとくちメモ
昼間走行灯(※デイライト)の照明部の大きさは、25平方センチ以上〜200平方センチ以下であること。単純に保安基準を満たすだけではダメかも!?
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2016年10月改訂・保安基準上のデイライト取り付けにおける注意ポイントをまとめると……
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このあたり(↑)が重要です。他にも「他の交通を妨げない」といった条件もありますけどね。
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確かにその他灯火類デイライトに比べると、取り付け位置などが厳格化されていますが……できない話でもない。
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しかし、問題はこれだけではないのです。
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え?
まだ何か難しい問題が? -
あります。今回の法改正が、社外品のデイライトにとって追い風になるような話ではないという事情が。
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……な、なんですって?
※「車検に通るデイライトの条件(後編)」に続く。
✔ 明るさ
✔ 夜間は消灯
✔ 色
✔ 取り付け位置
✔ ランプの大きさ(面積)
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF(http://www.ipf.co.jp/)企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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