ジャッキアップ用スロープの代用品を自作するメリット。材料は?
スロープは市販品もたくさんあるが、車高が低い車のジャッキアップには、使えないこともままある。そんな場合、スロープの代用品を、木を材料にして自作する手もある。ただし、弱い木材ではダメ。
J-LINEが市販のスロープを使わず、木材で自作する理由
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車高が低い車だと、ジャッキが入らなくてジャッキアップできないというのはよくある話。
●レポーター:イルミちゃん
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そんな時、普通は市販のスロープを使うと思うんですが……
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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しかし低車高でお馴染みのJ-LINEでは、市販スロープを使っていませんね。
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そうですね。
スロープの代用品を自作して、使っています。 -
それがこちら(↓)
木の板ですね〜。 -
なぜ、市販のスロープを使わないのでしょうか?
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理由はいくつかあります。まず極端に車高が低い車だと、市販のスロープでも、バンパーのアゴが突っかかってしまいます。
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あー。
確かに。 -
木材で自作すれば、いろいろな厚み、長さのものを組み合わせることができる。ここがポイントです。
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そういえば、いろいろな形が用意してありますね。
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まず、小さくて薄い木の利点は、タイヤのすぐ前・すぐ後ろに置けること。
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木が長いと、こういう場面(↓)で入らない。
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しかし、ここで短くて薄い木に載せれば……
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長い木もバンパーに突っかからずに、入るようになりますよ。
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ホントだ! 無事に厚くて長い木に、タイヤが載りました〜。
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なお、これでもジャッキが入らない状況なら、最初の薄い木を後ろ側に重ねて、さらにそこにタイヤを載せます。
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ウーム。車高やバンパー形状に合わせて、自由自在なんですね。
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そうです。木材で自作するメリットは、このあたりの自由度です。
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自分の車に合わせて、都合のいい厚みや長さで作ればいいんだ。
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それともうひとつのメリットとして、意外とタイヤが滑りにくかったりする。
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ナルホド。
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……といっても、材料の木は、何でもいいわけではありません。
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普通の木とは違うの?
リアタイヤの場合
トラックの荷台に使われるアピトン材なら、スロープの材料として理想的
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スロープ自作の材料としては、普通の木材では割れる可能性がありますよね。
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そっか。アルファードみたいな重たい車なら、なおさらですね。
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そこで使っているのが、アピトン材という木なんです。
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アピトン?
聞いたことナイ。 -
一般的な住宅などでは、あまり使われない木材ですね。
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ホホウ。
どういう木材なんでしょうか? -
トラックの床などに使われる木なんです。ちなみに薄いほうのは、トラックの床板がベースです。
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では、大きいほうの板は?
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これは、トラックの横ネタがベースです。ようはトラックの荷台のあばら骨みたいな部分ですね。
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この横ネタの上に、床板が敷かれるんです。それが、トラックの荷台の作りなんです。
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トラックって、木とか使うんだ。
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使いますよ。ただし、当然ですが、頑丈な木じゃないとダメじゃないですか。
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そもそも木というのが、意外な気もしますが。
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骨の部分は鉄だったりアルミだったり、という仕様もありますが、平ボディのような一般的なトラックの荷台は、木を使うのが主流なんですよ。
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へー。
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何トンもの荷物を載せられる木材か。それなら余裕で、重量級のミニバンのスロープになりますね。
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それでいて木材なので、好きな形状に加工がしやすい。
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加工性の良さは、木材の利点ですね。
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J-LINEのは、トラックの横ネタや床板をベースにしていると言いましたが、それを丸ノコで裂いて加工して、スロープ(傾斜)の形状を作っているのです。
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J-LINEは溶接のプロなんだから、例え相手が鉄でも、加工してスロープを作れるのでしょうが……
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しかし鉄が材料だったら、重くて使い勝手が悪い。それと、鉄はタイヤが滑ります。
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作れても、使いにくい。
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頑丈で耐久性があって、そのわりに加工しやすくて、滑りにくい……だからアピトン材を使っているのです。
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確かに。
スロープに必要な要素を、兼ね備えている材料だ。 -
気に入って何十年も使っているうちには、ツルツルに磨かれて、滑りやすくなってはきますけどね。
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そういえばコレも、だいぶ使い込まれているようですが……。
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私が26才のときに自作にしたものなんで、かれこれウン十年使っていることになりますね。アピトン材をスロープの代用として使っていて割れた、という経験は1度もありませんね〜。
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耐用年数、相当なものと言えそうです。
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ただアピトン材は、普通のホームセンターとかでは売っていないことも多いと思います。
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なるほど。
プロ向けの木材みたいな感じか。 -
一般的なDIYで、そこまでの木材を使う必要はないと思いますが、我々は使用頻度がハンパないので、頑丈な木材を使っているのです。
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スロープを自作する人はこの話を参考に、素材を検討しましょう。
そこで使われる木材が、そうそう割れない強度を持った、アピトン材なんですよ
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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