電源取り出し隊
細線、太線、中太線の違い。配線から電源取り出しするならどれ?
配線コードの細線・中線・太線の違いを知らないで、電源を取り出すのは危険かも……という注意喚起。例えば常時電源を探索中、エンジンオフで検電テスターが反応して、「コレだ!」と決めつけるのは早計なのだ。
12Vが流れているから電源に使える、という認識は間違い
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電装品を取り付けるとき、純正配線から電源取り出しするのは定番ですが……
●レポーター:イルミちゃん
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「12Vの電気が流れていれば、どの線でも電源になるわけではない」という点についてお話したいと思います。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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例えば、常時電源を探しているとして……
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エンジンオフの状態で検電テスターが反応するのが常時電源ですが、反応すればどの線でもいい、とは考えないほうがいいです。
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……なかなか厳しい話になりそうですね?
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検電テスターが反応したら、「お、コレだ!」って思う人が多いと思うんですよ……。
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検電テスターで調べているのは通電するタイミングですし、それ以上のことは分からないでしょう?
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そうなんですが、ここで注目してほしいのは、純正の配線コードの太さです。それなら見た目で分かるでしょう?
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ほほう。
確かに太い線もあれば細い線もある。 -
以前「電源取り出しで、トラブルを避けるコツ」でも触れましたが、電装品のメインの電源線を細線につなぐのは、トラブルの元です。
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あ〜、細線はやめておきましょう、という話でした。
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そうですね。
中太の配線が狙い目です。 -
……中太(ちゅうぶと)?
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そうです。細線でも太線でもない、中太の線です(※中線とも表現される)
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……は、はぁ。
しかし隊長…… -
なにか?
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「細線」「太線」「中太線」とか、抽象的に表現されても、馴れていないユーザーには分からないと思われますが?
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ナルホド。では、まずおさらいですが、配線コードの太さの規格はこうなっています。
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0.2スケアや0.3スケアは、細線(ほそせん)の扱いですね。
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そうですね。0.5スケアになると、細線の扱いではなくなりますが……
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では、0.5スケア以上を狙えばいい?
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そこそこ電気を使う電装品の場合は、さらにもう一段太めのAWG18(0.75スケア)とかAWG16(1.25スケア)クラスの中太線から電源を取るほうが無難です。
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そこそこ電気を使う電装品って?
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例えばキーレス・アンサーバック・セキュリティ等。これらは後付けするユニット自体が、ハザードを光らせる任務(↓)を請け負います。すると、7〜8アンペアの電流が流れる。
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そういえば、別の企画でフルアンダーLEDを組んだときも……
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テスターで測ったら、6アンペアを超えていました。
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LEDでも、大量にテープLEDを使うような大技になると数アンペアに達してしまう。
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フットライトのLEDを付けるだけなら問題なくても、量が増えてくれば、アンペア数は増えてきます。
検電テスターのきほん的なことは、「検電テスターの正しい使い方」参照。
█ AWGとsq(スケア)の対応表
AWG 14 | 2 スケア |
---|---|
AWG 16 | 1.25 スケア |
AWG 18 | 0.75 スケア |
AWG 20 | 0.5 スケア |
AWG 22 | 0.3 スケア |
AWG 24 | 0.2 スケア |
この瞬間にけっこう電気を喰う!
細線からの電源取り出しはトラブルの元。中太線が狙い目
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「電源取り出しは、なるべく太い線で行ったほうが安心」ということですね。
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しかし、ハンダで直結するならともかく、一般的にはエレクトロタップで分岐して電源取り出しすることが多いでしょう?
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普通はそうですね。
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エレクトロタップを使う場合は、タップ自体の適合範囲にも注意が必要です。
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例えば定番的に使われている、エーモンの赤いエレクトロタップ(※製品名は配線コネクター)ですが……
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この場合は、0.5スケア〜0.85スケアがコネクターの適合範囲内です。
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つまり、コレを使うなら0.75スケア(AWG18)あたりが狙い目ということですね。
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青いエレクトロタップなら、もっと太線でもいけますが……
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しかし分岐側の線がそれほど太くなかったら、かえって接触不良の原因になりますね。
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そっか。
適合範囲の下限も上がってしまうから…。 -
ですので、ほとんどの場合は、赤いエレクトロタップが使える範囲で、太めの線(中太線)を狙っていくのが現実的かと思います。
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……しかしですねぇ、隊長。
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なにか?
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今触っている配線コードが何スケアか、なんて初心者には分からないと思うんです。
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あー、確かにね。
いい手を紹介しましょう。
電源取り出しコネクターの超定番、エーモンの配線コネクター(赤)
太線の分岐に使うエーモンの配線コネクター(青)は、1.25〜2スケア線用。
つまようじより、ちょっと太い「中太線」を探そう
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「AWG18(0.75スケア)の太さなら安心」と言われても、「ドレ?」っていう話です。
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純正配線にはAWGいくつ、とか書いてないですしねぇ。
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馴れている人は、見ただけでコレは中太線だ、って分かるんでしょうけど。
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手短にあるもので説明すると……、たとえば、つまようじと配線を比較してみる手があります。
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ほぉ。
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つまようじは、ザックリな言い方ですけど、中太線くらいです。0.75スケアだと、つまようじよりはちょっと太いレベル。
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へー!
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例えばこの配線(↓)。これならば、電源取り出しをしていいレベル。
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これが「ちょっと太めの中太線」と表現される線のコトか。
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車内にはつまようじより細い配線がいっぱい通っていますが、そういう線からメインの電源を取るのは避けます。
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言われてみれば……確かにつまようじより、細い線が多いなー。
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そうなんですよ。
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読者が誤解しないようフォローしておくと、例えばドアカーテシ線とかロック線などを探すときは別ですよね?
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そういうのは、電源ではなく信号線ですから、細線で当然なのです。そもそも純正機器にとっても電源ではないから、配線自体が細線のはず。
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電源線と信号線の違いですね。あまり意識していない人が多い気がしますが。
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逆に言うと、「純正機器が信号線として使っているような線からは、電装品の電源は取れない」ということです。
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細線を避けるのは、そういう意味もあるんですね。
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そうですね。電源線ならある程度、太さがあります。
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なるほど、なるほど。
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特に、前出のキーレス、アンサーバック、セキュリティの取り付け時は、正直、「つまようじ級の配線でも足りないかも」というカンジなんです。
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だから、つまようじよりちょっと太い位の常時電源を探すのか。
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それがつまり、0.75スケアあたりの線ということです。
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なるほどね!
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逆に「うどんレベル」までいったら太すぎて電源取り出ししにくい、というワケです。
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あのォ、隊長……つまようじから、「うどん」って話が飛び過ぎでは?
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……う〜ん、ちょうどいい「麺」が思い浮かばないな〜。そうめんだと、細線だしな……ブツブツ。
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無理に麺に例えるのは、やめておきましょう……。逆に分かりにくい。
※厳密に言うと、つまようじの太さも均一ではない(いろいろある)ので、一般的なつまようじを目安としての話です。
中太線とつまようじの比較
細線とつまようじの比較
信号線は、細線で当たり前
配線分岐にエレクトロタップを使うときは「選び方」に注意! これを間違うと「接触不良」が起こる。DIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しているので、ぜひ見てね。
DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。配線図大好き。●コムエンタープライズ TEL 079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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