ヘッドライトの殻割りができなくなる日が来る!?
ヘッドライトの殻割りが難しくなる傾向が、いよいよ鮮明になってきた。ハリアー前期やC-HRも従来の熱分解による殻割りができず、切らないと開かなかったが、ハリアー後期の難易度はさらにUP。ヘッドライトの殻割りができなくなる日は、もう近い!?
ハリアー後期のヘッドライトを分解して分かったこと
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今日はちょっと、重たい話になりそうなんですけれども……。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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「今日は」ではありません。いつもです。
●レポーター:イルミちゃん
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今後の車は、いよいよヘッドライトの殻割りができなくなっていきそうな……というお話です。
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ええ〜ッ!!
それは……ひときわ重たい。 -
C-HRも熱分解はできないタイプのヘッドライトでしたが、レンズとハウジングの境界線を超音波カッターで切って、開けることはできました。
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ところが、最近登場したハリアー後期で、また殻割り事情が変わってきました。
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ほー。
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ここでいったん、状況を整理します。まず、ヘッドライトの殻割りには、2つのパターンが存在していました。
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ハリアーの場合、前期からすでに、熱分解できないタイプのヘッドライト(↓)でした。
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さらに、新たな問題にぶつかったのは後期です。
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ハリアー後期のヘッドライトは、レンズとハウジングの境界線を切っても開かないのです。
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どういうことですか!?
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ヘッドライトって、そもそもレンズとインナーとハウジングの3つで構成されているんですね。
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インナーはメッキとかの部分で、ハウジングは樹脂の土台部分ですね。
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で、インナーがレンズ側に付いている車の場合、通常ならレンズの境界線を切った段階で、レンズ+インナーと、ハウジングに分離できます。
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ところがハリアー後期は、レンズ側に付いているインナーの一部が、ハウジング側ともくっついていたんです。
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?
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実際に開けたヘッドライト(↓)で説明しましょう。
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てゆーか、殻割りできてるじゃないですか!
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いや。今回はナゼ開かないかも分からない状況だったので、実験的にハウジング裏側を大きくくりぬいて調べたんです。殻割りというよりは、切り刻んでの分解ですよ。
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背面をまるまる切って調べたんだ……。
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その結果分かったのは、レンズ側とくっついているインナーの一部が……、
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ハウジング側と、完全に接着している部分がありました。
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つまりインナーは、どっちともくっついているんだ。
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そうなんです。くっついている部分は完全に接着されていて、熱をかけても取れず、切るしかない。
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ん?
それなら、その接着部を切ればいいのでは? -
でも、まだ開いてないヘッドライトの内部を、どうやって切るんでしょう?
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……そ、そういうことか。
難易度ウルトラCながら、開くことは開くC-HR
熱分解できるヘッドライト
通常の車種は、熱をかけてシーリングを柔らかくすると、レンズとハウジングが分離できる。段ボールとドライヤーを使う殻割り方法が、よく知られている。球屋流は、ヒートガンで境界線を直接あぶりながら開ける。
※詳細は、「ヘッドライトの殻割り方法」参照。
熱では開かないヘッドライト
熱をかけてもレンズとハウジングの分離ができず、超音波カッターなどで境界線を切って開けるしかないタイプ。閉じるときの防水処理も難しい。ヘッドライトでは珍しいが、テールランプはほとんどがこのタイプ。
※詳細は、「熱では殻割りできないヘッドライト・テールランプの開け方」参照。
ハリアー前期のヘッドライト。
検証したのは、シーケンシャルウインカーを搭載しているヘッドライト。
ハリアー前期の場合
実験的に分解したハリアー後期ヘッドライト(シーケンシャルウインカー仕様)
インナー&レンズ側
ハウジング(土台)側
ヘッドライトのレンズを分離できる構造ではない
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つまり、裏からハウジングの一部をカットして開けて、そこから接合部分をカットしないと、レンズが外れません。
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でもそれをやれば、殻割りはできるんでしょう?
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いやー。切り刻んで開けているだけで、これをもってして、「殻割りできる」とは言えないですよ。「開かない」と思ったほうがいいです。
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調査が済んだので、今後はもっと小さなくりぬきで対処できますが、どっちにしても、ハウジング背面をくりぬくのは必須になります。
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絶対に開かないかと言われれば、開かないヘッドライトはないですけど……、
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しかし、レンズとハウジングを分離できる構造ではなくなってきているので、「殻割り」という概念ではないですよね。
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なるほどね。
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しかも、今回のようにハウジングを切るとなると、防水をしっかりできる技がないと、非現実的です。
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切り刻んで開けるだけでは、意味がない。
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そうなんですよ。ハウジング部分は素材的に溶着するときの付きが悪いので、こういう開け方をすると、閉じる時はもっと難しい。
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なるほど……ね。
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ハリアー前期やC-HRも、切らないと開かない。その時点で、敷居は高くなっていましたが、今後は「開けられる」とは言えない構造のヘッドライトも増えそうです。
今回は調査のために、ざっくりハウジング背面を切っている。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
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