熱では殻割りできないヘッドライト・テールランプの開け方【第1回】

ヘッドライトの殻割りというと、ドライヤーと段ボール箱を使って温めたり、ヒートガンであぶったりしてシール剤を柔らかくして開けるイメージが強いが、「熱」では開かないヘッドライトもある。特にテールランプは熱分解できない車種が多い。このタイプは、超音波カッターなどを使って切って開けるしかない。
熱で開かないなら、超音波カッターで切る
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ヘッドライトの殻割りといえば、ドライヤーやヒートガンの「熱」でシール剤を柔らかくして開けるもの、と思っている人が多いと思いますが……
●レポーター:イルミちゃん
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最近は、熱では開かないヘッドライトも出てきているんですよね〜。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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ムムム。
今日も重たい感じのスタート。 -
実際に球屋で確認できている例としては、40系プリウスα後期、60系ハリアー、CX-3などが熱分解できないライトでした(全グレードかどうかは不明)。ちなみに外車は、熱分解できない車種が多いです。
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へえ〜!
国産車は今のところ少なめでよかった。 -
とはいえテールランプは熱分解できない車種が多いですよ。
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熱分解できないライトの場合は、どうするんですか?
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切るしかないですよね。
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切るってどうやって?
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超音波カッターを使います。
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超音波カッターとは?
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刃を高速振動させながら切るカッターですよ。固い樹脂もキレイに切れるので、ちょっと値は張るけど、超音波カッターを使うのが現実的です。
振動する刃で溶かしながら切り進む

殻割り前の下準備

あとで防水しやすいライン取りを考える
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というわけで今回は、ハリアーのヘッドライトをモデルに、超音波カッターで殻割りする方法を紹介します。
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超音波カッターで切るということですが、どういうラインで切っていくんでしょう?
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そう。そこが重要なんです。僕らの場合は、最後に防水しやすいラインを狙います。「防水のしやすさ」というのは優先度が高い。
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あとで防水しやすいラインと言われても……ドコのことでしょう?
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たとえばレンズの端の方が、ハウジングの溝にハメ込まれているようなところ。このラインで切れば防水しやすい。
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フムフム。
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この場合、溝を防水処理すればいいわけですから。
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なるほど。確かに何もない平面部を切ったら、防水処理がやりにくそうですね。
熱では分解できないハリアーのヘッドライト

ジャマになる突起物を先に切り落とす
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切りたいラインで切ろうとしたときに、ジャマになってくるエラ部分などがあります。それを先に切り落としておきましょう。
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このエラがあると、レンズがハウジングにハメ込まれている溝のラインで切れません。
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こういう突起って、全部切って大丈夫なんですか?
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ネジ固定するのに必要になる箇所は、最後に付けられるように考えながら切ります。
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あとでまた戻すわけか〜。
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ただ、切った部分を全部溶着し直すわけではないですよ。
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え!?
そうなんですか? -
レンズとハウジング自体を本来切れていないラインで切り離すわけですから、その時点で残しても意味がなくなる部分も多いです。例えばレンズ側のツメが、ハウジングに噛んでいる部分とかね。
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そのツメで、ライトとハウジングが再固定できるわけじゃない。
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そうですね。切り離したレンズとハウジングは改めて別の方法で溶着するしかないので、固定用のツメなどはもう意味がなくなります。
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なるほどね〜。
では、後から戻す必要がある部分って? -
ヘッドライトを固定するため、強度的に必要な部分ですね。レンズ側の突起を切ってしまうとハウジング側のステーだけになって厚みが足りなくなる部分とかは、最後に溶着し直しますよ。
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厚みがなくなると、強度的に弱くなるからかー。
切りたいラインにかかるエラ状の突起部

先に切り落としておく

切り落としたところ

レンズのツメがハウジングに噛んでいる箇所

アレもコレも残そうとするのは逆効果
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改めてじっくり見ると、切断したいライン上にいろいろな障害物が登場しますね。
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下写真の黒いカバーみたいな突起もあります。でもコレも、最終的にレンズを溶着して防水処理してしまえば不要なので、切りっぱなしで大丈夫です。
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熱分解のときとは違って、いろいろ切り落とす必要があるんだ。
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そうですね。残すことにこだわると、防水に無理のあるラインで切らざるを得なくなってしまう。それよりは、防水しやすいラインで切ることを優先していきます。
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なるほど。
防水優先だから、多少の犠牲は仕方ない。 -
そういうことです。反対に、切るだけでは不十分な箇所もありますよ。
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これもレンズのツメを受けている部分ですよね。切っていいんでしょう?
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こういう場所は、ただ切り落としただけだと、真ん中の段差が残りますよね。
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確かに。
わずかな段差がありますね。 -
この段差が残ったままだと、防水処理の支障になります。
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そこが隙間になって水が入る?
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そうなんですよ。だから、後でこういう凹凸箇所はフラットに処理したりとかします。
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そんなことまでするんだ!
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そこまでやっておいたほうが、後がラクです。
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ずいぶん防水にこだわるな〜。さすが球屋と言うべきか。
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開けるときよりも、閉めるときの防水のほうが入念にやらないといけないんですヨ。
黒いカバー状の突起が境界を隠している

強度とは無関係なので切り落とす

ハウジングの段差に注目

下準備ができたので、次ページではいよいよ殻割り開始!
