電装DIYの知識
「配線通し」も奥が深い! バルクヘッドの突破力ならコレ
配線通しがうまくいかないことは多々ある。特に、エンジンルームから車内への配線引き込みのシーン。車の内外の仕切り・バルクヘッドが立ち塞がる。しかし、作業は道具。エンジンルーム(車外)から車内への配線引き込みに特化した、便利アイテムを紹介する。
エンジンルーム→車内への配線引き込みで、立ち塞がるバルクヘッド
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バルクヘッドの配線通しに特化して研究開発した、新型の配線通しを発表したいと思います。
アドバイザー:DIYライフ 藤本研究員
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バルクヘッド?
DIYラボ レポーター:イルミちゃん
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バルクヘッドとは、(車の用語としては)室内空間とエンジンルームの仕切りになっている壁のことですが……
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フムフム。
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エンジンルーム側から室内側へ配線を引き込もうとしたときには、文字通りバルクヘッドが「壁」となって立ち塞がるんですね。
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それは困ります。室内に配線を引き込みたい場面は、DIY作業でもけっこう出てくるので。
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そうなんです。DIYライフとしましては、バッ直関連ケーブルに力を入れておりますが……、コレがまさにそう。
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例えば、社外ホーンなど、エンジンルーム内に付けるパーツにバッ直配線するならいいんですが、車内の電装品用にバッ直をしたい場合は、このバッ直ケーブルを室内側に引き込む必要があります(↓)
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この線を室内に引き込んでから、後半のリレーキットとつなぎますよね。
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だから、車内に設置するインバーターとかサブウーファー用にバッ直するときには、バルクヘッド通過が避けては通れない。
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なるほど、なるほど。
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で、ここにはグロメット(※ゴムキャップのようなもの)があって、純正配線の通り道になっていますが……
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上のように、もともと予備の配線通し用の穴が開いている車種ならカンタン。一般的な配線ガイドでも、通せます。
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しかし大半の車種は、こう(↑)はいきません。
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なぜか?
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グロメット自体に、予備の穴などない車種が多いからですね。
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単に塞がれている状態……なんですね。
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そういう時は、配線通しでツクっと刺して、穴を開けて通しますが……
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この場面、一般的に使われている「細くて長い配線通し」では、穴を開けて通そうとしても、なかなか上手く穴が開かない。
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先端が尖っていないから。
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それもあるし、突こうとすると、しなりで力が逃げてしまったりするし……。
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まあ、そもそも配線通しは、穴を開ける工具ではありませんからねぇ〜。
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……で、バッ直ケーブルを購入したお客さんから、「どうやって配線を通せばいいですか?」「市販の配線通しでは上手くできない」と、問い合わせを頂きまして。
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なるほど。
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特にギボシ端子付きのバッ直ケーブルは、切りっぱなしの線より通しにくい。引っ張っているうちに、配線通しから外れてしまったり……。
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よくある話ですね。配線通しだけ通ってもイミがない。
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そこで! そんなお客様の声をモトに、バッ直ケーブルの車内引き込みに特化した配線通しを作ろうと考えました。
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今日はいつになく前置きが長い。
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……それだけこだわっているのです。
✔ バッ直の意味や、やり方そのものは、「バッ直とは何か? 初心者向き〈バッ直電源取り出し〉入門」参照。
エンジンルームから車内への配線引き込みに特化した「配線通し」
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というわけで、エンジンルームから車内へ配線を引き込む場面に特化して、オリジナルの配線通しを開発しました。
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どうやら単なる棒ではなさそうです。
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まず、ミソは先端が尖っていて、グロメットに穴開けしやすい構造であること。
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けれども、鋭利過ぎない具合にはなっています。少し先端を落としてある。
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針みたいに、尖っているわけではないんだ。
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そうですね。工具でいうと、ちょうどドライバーと同じような感じのトンガリ具合に仕上げています。
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なるほど。
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そして「長さ」ですが、一般的な配線通しよりは短い、30センチにしています。
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30センチに意味がある、ということですね。
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バルクヘッドを通す場面で考えると、長い配線通しは、けっきょく短く持って使うことになるので、最初から力を伝えやすい短さで作ったのです。
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フムフム。
力をかけやすい長さなんだ。 -
そもそも、グロメット(フタ)を貫通させて室内側へ引き込んで、配線通しが室内側に姿を見せる……ぐらいまでの距離で考えると、せいぜい20センチ程度の世界。
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30センチの配線通しで十分というか、ちょうどマッチすると言える。
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そうなんです。細くて長い棒だと、通せたとしても、その向こう側で配線通しの先が行方不明になってしまったりするという問題もありましたが……
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そういう問題も、起こりにくい仕様。
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ハイ。迷子になりにくい=室内側から迎えにいくときは、先端をとらえやすい。ここもポイントなのです。
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確かに、この作りは絶妙かも☆
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コダワリはまだあります。
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……まだあるんだ。
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これね、2ミリ厚のステンレス製なんですよ。
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2ミリ厚にしたのは、配線を留める部分に強度を持たせる意味もあります。
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そういえば、配線を引っ掛ける部分も、独特の形をしていますね。
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ここは2スケア線まで対応できるミゾになっていて、ギボシ端子が付いている配線だとしても、抜けにくい構造にしてあります。
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バッ直ケーブルを室内に引き込もうとしているのであれば、あまり細線は使わないだろう、という前提で、太い2スケア線のホールド性を重視した設計です。
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まさしくバッ直特化の配線通しってワケか。
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さらにもうひとつ言わせてください。
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まだ続くの?
棒1本に込めたコダワリがスゴイなァ。 -
この配線通しは、固いようで、曲がります。
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あ、本当だ。
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これは超コダワリの厚みなんです。貫通させる場面ではしならない強度を保ちつつ、手で曲げようと思えばすぐ曲がる、という厚み。
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へー。
それはどうして? -
配線通しは、車種の構造によっては曲げて使いたい場面もありますからね〜。必ずしも真っ直ぐ室内側へ抜けてくるとは限りませんので。
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工具を曲げてでも、配線を通したい場面があるということか。
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そうそう。
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でも、金属の棒を何回も曲げたり戻したりしていたら金属疲労で折れますよね?
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それはそうね。だから消耗品的な使い方も可能なように、低価格にしたんですよ。
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気になるお値段は?
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498円です。
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バッ直屋さんが作ったオリジナル配線通しなだけあって、いろいろとよく考えられているようです。
DIY用品ショップ、DIYライフオリジナルの配線ガイド フック式
グニ!
バッ直にはメリットだけでなくデメリット(リスク)もある。そのあたりはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeで解説しているので、ぜひ見てね。
DIY Laboアドバイザー:藤本壮啓
某カー用品メーカーに長年勤務し、車業界にDIYを広めた伝説の広報マン。現在は独立して、DIY用品を扱うセレクトショップ「DIYライフ」を設立。単なる製品の宣伝トークではない、DIYユーザー側に立ったアドバイスが持ち味。通称「フジモン」。
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