ドレスアップの気になる話題
LEDフォグランプが明るすぎると、ロービームのジャマをする!?
LEDフォグランプの明るさは、(他車の迷惑にならない範囲では)明るいに越したことはない……ような気もするが、実際のところはどうなのか。フォグランプの明るさを決める前に、一読をオススメ。
フォグランプの明るさを決める前に
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この記事は、「H16フォグランプ(19W)には何WまでのLEDバルブを入れても大丈夫?」の続編です。
●レポーター:イルミちゃん
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前回は、読者の方の質問が、「何Wまで入れていい?」という限界を問う趣旨だったので、「安全なのは純正と同じ19Wまでです」と答えました。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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純正配線のキャパの問題があるから、でしたね。
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そうですね。しかしこの問題、補足しておくと、そもそもフォグランプのバルブを選ぶときに、フォグだけの明るさで決めないほうがいいです。
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ん?
なんのことでしょうか? -
え〜っと、例えば、代表的な純正フォグランプの消費電力を挙げると、以下のようになっていますよね。
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前回教わったリクツで言えば、H8フォグランプなら、最大35WのLEDフォグバルブまで入れられる、ということですね。
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灯体や配線のキャパの視点では、そうなります。でもフォグランプの明るさを決める上で考えてほしいのは、ヘッドライトの明るさとのバランスなのです。
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ヘッドライト……がなぜここで出てくるの?
█ フォグランプの消費電力
H16 | 19W |
---|---|
H8 | 35W |
H11 | 55W |
ヘッドライトもフォグランプも両方とも同等に明るいと…
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例えばの話をすると、IPFのヘッドライト用LEDバルブ、X2シリーズの消費電力が28Wです。
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5000ルーメン(左右合計)に達した、そろそろHID並に明るい最新型のLEDバルブですね。
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X2シリーズはヘッドライト用ではありますが、H11フォグランプならH11ヘッドライト用が付いてしまう可能性がありますよね。後方スペースが広い車だとして。
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あ、言われてみれば!
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しかし、物理的に装着可能なケースだとしても、この流用はNGなんです。当然、IPFの公式見解としてもNGです。
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それはなぜ?
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理由はいくつかありますが、今回のテーマにからむ話をすれば、ヘッドライトとフォグランプが同等の明るさになってしまうこと自体、バランスが悪いのです。
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え〜。でも、H11フォグランプなら55Wまで対応できるんだから、28Wは許容範囲……
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そういう話ではないんですよ。
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じゃあ、どういう話?
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ヘッドライトは遠くの路面を照らすランプです。それに対してフォグランプは、手前の路面を照らすランプです。
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フォグランプの配光特性については、以前に教わりましたね。
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両者が同じ明るさだったら、どうなるか。
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奥も手前も同じ明るさでハッピー?
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……とはならないんですよ。光源が同じ強さだとしたら、手前の路面のほうが明るくなるでしょう?
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あ、そうなるか!?
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そして人間の目の特性として、明るい場所があれば、そこに瞳孔(どうこう)サイズを合わせにいきます。
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……な、なんの話ですか、市川研究員!?
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明るさによって、人間の目の瞳孔サイズが変わるのは知ってますよね?
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はあ……、なんとなく知ってるけど……なんでしたっけ???
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真っ暗な部屋に入ると、最初はなにも見えなくても、目が慣れてくるとうっすらと見えてきます。
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人間(や動物)の目は、明るさに合わせて最適化しているのですよ。
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自動補正機能が付いているんですね〜。
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しかし、限界もある。真っ暗な場所から、明るい場所へ出た瞬間は、眩しすぎてなにも見えなくなりますよね。トンネルから出た瞬間とかもそう。
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瞳孔サイズの調節が、追いついていないから?
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そうなんですよ。……でね、話を戻すと、路面の手前が強い光で照らされていると、相対的に遠くの路面が暗く見えてしまう、ということです。
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ムムム。
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つまりフォグランプが明るすぎると、先を照らすロービームが暗く感じてしまうんですね。
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本末転倒じゃないですか!!
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ハイ。いくらヘッドライトに5000ルーメンのLEDバルブを入れても、人間の目で調節されてしまっては、体感的な明るさが下がってしまいます。
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それは困る。
どうすればいいのでしょう? -
手前から遠くのほうまで、明るさにムラがなく均一なのが理想なんです。
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明るくするなら、全体的に明るく、が望ましい。
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そういうことですね。
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……では、フォグランプはどうあるべきなの?
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近くを照らすフォグランプの光量は、ヘッドライトに比べて相対的に控えめにしたほうが、結果的に路面の明るさが揃って、前方が見やすく走りやすい、ということなんですよ。
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か、科学的!! 今日は「ドレスアップの気になる話題」じゃなく、「ドレスアップのサイエンス」かも。
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ラボ(研究所)ですから。
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……というわけで、フォグランプとヘッドライトは、バランスが大切、というお話でした。
フォグランプの配光
✔ ひとくちメモ
●暗い場所では、光を集めるために瞳孔が大きくなる。 明るい場所では、目を痛めないように瞳孔を小さくする。
●猫を撮影するときは、暗い場所で撮るほうが、瞳孔が大きくて丸くて可愛い、とされている。
ヘッドライト+フォグランプを合わせた配光
ロービームのカットライン直下(一番遠くを照らす光)が一番明るい。
なお、本分中に出てきたヘッドライト用LEDバルブを、フォグランプに流用するのがNGな理由は、別記事の「H11ヘッドライト用LEDバルブを、H11フォグに流用できるか?」でより詳しく解説している。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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