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LEDヘッドライトの冷却ファンが壊れる、は本当か?
後付けLEDヘッドライトバルブ選びで、たびたび問題になるのが冷却ファンの有無。「ファンレスVSファン付き」のどちらがよいか。ファンレス派は「回転部品のファンが壊れる」と指摘。一方ファン付き派は「冷却の重要性」を語る。この論争を真っ向から検証する。
冷却ファンが壊れる、というのは誤解!?
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今日のテーマは、後付けLEDヘッドライトの「ファンレスVSファン付き」論争。
●レポーター:イルミちゃん
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なんか、大げさだなぁ……
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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以前「LEDヘッドライトの放熱が重要な理由」の記事で触れましたが……LEDヘッドライトバルブは、パワーLEDを使っているのでかなり熱くなるんですよね。
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そうですね。それによって熱ダレを起こし、点灯時間が経つにしたがって、ルーメン値が下がっていきます。
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だから冷却が重要だ、と。
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IPFのLEDヘッドライトバルブが冷却ファンを搭載しているのは、そのためです。明るさもキープできる。
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しかし、ファンを搭載するかしないかは、メーカーによっても考え方が違います。
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それはそうですね。
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ファンレス派に言わせると、「ファン自体が壊れる」という指摘もありますが、そのあたりはどうお考えですか?
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うーん。それを言うなら、せめて「粗悪なファンは」と付け足して欲しいです。
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なるほど。
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「ファン付き=壊れる」というのは事実ではありません。そこは品質の問題なのです。
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確かにファン=壊れるものなら、お堅いIPFが採用するとは思えませんね。
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IPF社内でも、最初はファンを搭載すること自体にかなり慎重意見がありました。やはり回転部品であるファン自体の故障を心配する声が多かった。
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ファン自体の故障の可能性について、IPF内でも論争があったのか。
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だから、その点は、かなり過酷な試験を重ねているんですよ。
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過酷なテストとは?
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例えば砂を入れたらどうなるか。泥水を入れたらどうなるか。塩水に浸したらどうなるか。
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ヒドイ。
IPFの開発の人たちは、ドSですか? -
泥塩水テストっていうのもやりました。海水の10倍の塩分濃度で。
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石橋を叩いて壊すIPF、というウワサは本当なんだ。
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しかし、使用用途に合わせてしっかり設計すれば意外なほど壊れません。
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まあ、ノートPCなどにも冷却ファンは使われていますが、それだって何年も持ちますからね。
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ようはファンの品質もピンキリなんです。
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例えばですね、物理的に爪楊枝みたいなモノを差し込んでファンを止めたら、止まりますけどね。
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もし小枝がささって、ファンが止まったらどうなるの? ヘッドライトが消えたら危ないなぁ。
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それも試験していて、ファンを止めていても大丈夫。放熱性が下がるのでLEDチップの寿命は短くなってしまいますが、すぐに壊れるわけではありません。
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では、後から小枝を抜けば問題はないんだ。たまにチェックしていれば。
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そもそもファンはムキ出しではないので、物理的に小枝などがささりにくいようにはなっています。
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そういえばファン、外から見えないですもんね。
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結果的に、ファンが原因での故障報告は、ほぼないに等しい状況です。
冷却ファンを搭載したLEDヘッドライトバルブ
高い配光性能で大人気となっているIPFのH4・LEDヘッドライトバルブ「341HLB」
IPFも、フォグLEDバルブはファン非搭載
IPFのフォグLEDバルブは、ドライバーユニットが別体化。さらにファン非搭載。ゆえに非常にコンパクト。
採用する冷却ファンは、IPFのLEDヘッドライト専用に開発されている某ファンメーカー製。
ファンが停止してもLEDヘッドライトは消えない
ファンのモーター焼き付きを防止するためモーターの電流は制限するが、LEDチップへの電気は供給される。
冷却ファンの寿命の心配は……?
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でもファンが故障しなくても、ファン自体の寿命のせいで、LEDヘッドライトとしての寿命が短くなる可能性は?
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それこそ、ほぼ心配しなくていい話です。
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それはなぜ?
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寿命については「使用用途に合った設計のファン」であることが重要なポイントなので、IPFのLEDヘッドライトは、汎用ファンではなく専用にゼロから設計したファンを使っています。
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汎用品のファンを採用してるんじゃないんですね。
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使用用途に合った品質の高いファンならば、LEDチップより、ファンの方が長持ちするほど。だからファンを搭載したから製品寿命が縮まる、という話ではないんです。
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何千時間と使っても、大丈夫?(※HIDの寿命が約2000時間)
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数万時間というレベルですよ。ノートPCの冷却ファンも稼働時間はかなり長い。良いモノは相当に長寿命で設計されています。
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そうなんだ〜。
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ちなみにLEDヘッドライトバルブを構成している部品で、一番寿命が短い部品はどれなのか? というと、コンデンサーとかなんですね。ファンではないのです。
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あれ? 電子部品って動かないから壊れない……みたいなイメージがありましたが。
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そうではないんです。そして電子部品の寿命に影響を与えるのは「熱」です。
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なるほど。
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だから長寿命という観点で言うなら、むしろやはり冷却が大切。そういった回路部品を冷やさないといけない。
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ファンがあったほうが、寿命が延びる?
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そうなります。IPFのLEDヘッドライトは、ドライバーユニットをファン後部に一体化させて、LEDだけでなくドライバー回路も冷やす、という設計なんです。
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お尻が大きいところには、そんな合理的な理由があったんだ!
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いろいろな理想を追うと、IPFとしてはファン付き、ということになるのです。
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なるほど、なるほど。
後部に収まるドライバーユニットまで冷却される仕組み。
高性能な冷却ファンにもデメリットはある
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さて次は、ファンレス派……という立場から意見を述べさせて頂きたいと思います。
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はい?
IPFはファン付き派でしょ? -
え〜っとですね。
出したんですよ、IPFも。 -
なにを?
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ファンレスのLEDヘッドライトバルブ。
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なんなの!?
その展開!! -
聞きましたか、皆さん!! あれほどファンの重要性をうたっていたIPFが、ファンレス派に寝返ったもよう。
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あ……いや。
そういうことじゃないんですよ。 -
じゃあ、どういうことなんですか!?
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IPFとしては、フラッグシップモデルがファン付きという点では変わらないのです。ベストな明るさと配光を出す、と言う意味ではファンは必要です。
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それなら、ファンレスいらないと思う。
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……いや、ファン付きでは、どうしてもクリアできない問題もあるのです。
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つまりファンのデメリット?
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それは、バルブの奥行きが長くなってしまうこと。
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そのせいで、どうしても装着できない車種(後方スペースが足りない)が出てきてしまいます。例を上げると、キャラバンや軽バンなどです。
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そっか。
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どんなにファン付きの良さを語っても、「でもデカイから付かないんだよね」となると、そこで終了なんですね。
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そりゃそーだ。
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でも、IPF製LEDヘッドライトの配光性能などを高く評価してくれるユーザーさんが増えた結果、付かない車種にまで付けようとする人が(ありがたいことに)出てきました。
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え?
でも付かないんでしょ? -
ところが一部の熱心なユーザーさんは、車側を叩いて強引に付けるというケースまで出てきてしまって……
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ええッ!!
バルブを付けるために、車体側を加工っ!? -
そうなんです。エブリィやキャラバンではそういう人が続出しました。ありがたい話ではあるんですが、これは申し訳ないな〜、という声が社内でも上がりました。
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それで、ファンレス開発に乗り出したのか〜。
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バルブの配光性能などはそのままに、小型化させたモデルを作ろう、ということになりました。そのためには、ファンをなくすしかありません。
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話が意外な方向に急展開。「ファン付きVSファンレス」論争の行方は?
※第2回目の論争、「ファンレスのLEDヘッドライトを買う前に、知っておくべき話」に続く。
IPF製のファンレスLEDヘッドライトバルブ???
ファン付きなのでお尻が大きい
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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