軽自動車が車高調だけでは落ちきらない理由
軽自動車(特にワゴンR等のスズキ車)は、足まわりの構造的に車高調だけでは落ちきらない車種が多い。ネックはリアだが、フロントだけ落としてもバランスが変。結果、落ちないリアに合わせるハメに。低車高派としては対策が必要なので、まずはリア車高が落ちきらない理由から知っておこう。
リアは車高調だけでは落ちきらない車種が多い
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ワゴンRなどの軽自動車は、車高調を組んでも思ったほど車高が落ちなくてガッカリ、という人が多いようですね。
●レポーター:イルミちゃん
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軽自動車でも落ちる車種はある(四輪独立式の足まわり等)んですが、傾向として、最近のスズキ車は特に落ちないんですよ。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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最近って、どの位の型式からですか?
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MH21Sあたりから、車高調だけでは落とせなくなってきました。MH23Sや、MH34Sも同様に落ちません。
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では検証してみます。まずはMH34SワゴンRに車高調を組んで、車高調整を全下げにして、どこまで落ちるのか確認してみました。
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車高調は「自由に車高が調整できる」のがウリですが、ここではハナっから、スプリングシート全下げです。
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しかし、車高調だけだとリアはこの位までしか(↓)車高が下がりません。
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こ、これは!……タイヤとフェンダーの間にグーが入りそうな勢いなんですけど? それって言い過ぎ?
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モデル車が16インチの40扁平を履いているので、余計に隙間が空いていますが……とにかくリアは、車高調を組んでもあまり下がりません。
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ということは……。
フロントはもっと下がる? -
今どきは全長調整式(フルタップ式)車高調なので、フロントだけならもっと下がります。でも、フロントだけ下げても意味ないでしょう?
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確かに。
水平に落ちないと意味ないですね。 -
そうなんですよ。だからフロント車高は、リア車高に合わせて決めるしかない。けっきょくワゴンRのような軽自動車の車高はリアで決まる、ということです。
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なんか車高調というより、ダウンサスっぽい印象ですね。
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車高調によって多少の差はある。でもフェンダーをタイヤにカブせるとか、そういうのは物理的に無理ですね。
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スプリングシート位置を全下げで、ここまでしか下がらないとは……もの足りない! と感じる人が多いのも分かりますね。
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で、よく電話で問い合わせがくるんですよ。「もっと短いバネありませんか?」「バネを切ればもっと下がりますか?」って。
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う〜む。
全下げでもカブらないなら、バネを切るしかない? -
ところがバネを切っでも、ワゴンRは大して下がらない。もっと言えば、ワゴンRの場合、例えバネを取ってノーサスにしたところで、大して下がりません。
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ええ〜!!
そんなバカなっ。 -
まあ、車高調全下げ状態よりちょっとは下がりますが、バネを取ってもフェンダーはホイールにカブらない。タイヤに少しカブるかな〜、ぐらいのところで終わると思う。
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要するに落ちきらない理由は、バネの問題ではないってことですね。
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そういうことです。
これは構造的な問題なので。 -
そして現実的には、バネなし! というわけにはいかないから……。
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車高調を組んでも、タイヤにカブせるなんて全然無理なんですね。
MH34Sを車高調で全下げしたが……
落ちないリア車高に合わせると、こんな感じ
リア車高が落ちきらない理由は?
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ここからは、リアが落ちない根本的な理由について探りましょう。
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MH34SワゴンRのフレーム形状を例に説明します。タイヤを外して横から見ると分かりますが、そもそもフレームと足まわりの距離が短いんです。
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つまり足まわりがストロークする余地が、そもそも少ない構造なんです。
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そういえば、バネもショックも短いですよね。
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この手の軽自動車は、車内をできるだけ広く取ったり、シートが後ろまでスライドできるようにしたり、そういった室内側の快適性を重視して設計されてますよね。
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最近は、特にそうですよね〜。
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もしもフレームが上がっていると、上側はトランクルームにしかできない。
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それじゃあ、車が売れなそうですね。今どきは。
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だからフレーム位置が低くなる。ようするに、足まわりが動くスペースがどんどん室内に取られているわけです。
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なるほど。室内が広くなった裏で、そういうのが犠牲になっていたのか。
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こういう構造だと、車高調を付けても、下げ余地は知れているんです。無理に落としても、足まわりがフレームにドン! と突いてしまうだけ。
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ぶつかったら、どうなるんだろう?
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実際にはそうならないように、バンプラバーという部品が入っている。足まわりがフレームに干渉する前に、ゴム(ウレタン)に当たって止まるようになっています。
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ワゴンRだと、バネのところにバンプラバーが付いていますよ(↑)。※バネは外して撮影
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このお団子みたいのがバンプラバーか。
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足まわりによっては、ショックのカバーの内側のことも。いずれにしてもどこかにバンプラバーが入っていて、フレームにぶつかる前に止めるようになっています。
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防波堤みたいなものですね。
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このバンプラバーにタッチすることを、「バンプタッチ」って言うんですけど……
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フムフム。
それ以上下がらないようにする限界点ですね。 -
そうです。すでにバンプタッチしているか、それに近い状況でバネだけ短くしても、車高は落ちない……ということなんです。
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それがリア車高が落ちきらない理由か!
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ところが、バネの長さで車高が決まっていると誤解している人が多い。で、「車高調を組んだのに、これしか下がらないの〜?」となり、バネを換えようとしますが……、
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その場合は、バネを換えても車高は落ちませんね。
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すでにバンプタッチしていることに、気づいていない人がけっこう多いです。
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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