足まわりのQ＆A

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ロアアームを延長すればもっと太いホイールが入る？

ロアアームを延長すれば、キャンバー角が付く。ならば、今より太いホイールが履けそうな気がするが、実際にはどうなのか。足まわりのプロに聞いてみた。

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  今日は、ロアアーム延長とホイールマッチングの関連性について解説します。

  ●アドバイザー：J-LINE 氏家研究員

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  この企画は、読者の方からの質問が元になっています。以前に、「30系プリウスを例に、プロショップ流ホイールマッチング（サイズの煮詰め方）を学ぶ」という記事をやりましたが、それを読んだ方からの質問です（↓）

  ●レポーター：イルミちゃん

■ 質問

（J-LINEの30プリウスは）フロントのホイールサイズが8.5J＋42となっています。付けているロアアームは、「センターポジション補正」のことしか触れていないので、おそらく延長はされていないロアアームだと思うのですが、そうだとすると、10ミリ延長のロアアームを付けたとしたらキャンバー角も付いて、もう少しだけ太いホイールが履けるようになりますか？

質問╱るぱん145世さん

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  J-LINEの30プリウスを改めて見てみましょう。


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  そして、議題のフロントはこんな感じ（↓）


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  この状態を見ると、約1センチ程度はツラウチ状態。そこで、るぱん145世さんは、次のように考えました。

【質問の続き】

写真を見る限り、ホイールからフェンダーの隙間は1cm弱くらいでしょうか。内側の隙間は分かりませんが、ほどほどにあるとしたら、計算上は9J＋38くらいなら入ると思うのですが、いかがでしょうか？ リアと合わせて、フロントに9Jを入れたいのです。

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  まず、読者の方の指摘の通り、この30プリウスのロアアームは延長していませんよね？

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  ハイ。あくまでもホイール位置を下げてハンドルを切りやすくするためだけに、ロアアームを交換した例です。

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  ……とすると、延長タイプのロアアームを付ければ、9Jが履けるのではないのか？ という見立てはどうでしょうか？



J-LINEのロアアームには、0ミリ（延長なし）、10ミリ、15ミリがある。今回のプリウスが使っているのは0ミリ。

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  え〜っとですね、まず重要なこととして、延長タイプのロアアームを付けると、逆に太いホイールは入らなくなるんですよ。

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  ……え？

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  9J+38が入るか入らないかはさておき、延長タイプのロアアームを使うのは間違いなんです。

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  いったいどういうことなんでしょうか？

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  ロアアームを延長すれば、若干はキャンバー角が付く。しかしホイールの出面（でづら）としては、今より外に出てきます。

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  下は出ても、キャンバー角が付くのだから、ホイールは倒れて、上側は引っ込む……ではなくて？

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  それは違いますね。構造的な話をすると、ストラット式の足回りは、ショックを上側（アッパーマウント）と下側（ナックルアーム経由でロアアームにつながる）の2点で固定しています（※タイロッドなどは除く）


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  ロアアームを延長すると、ショック下側を外に出す動きになる。けれど上側（アッパー）の位置は変わらないから、ショックの角度が倒れるっていうリクツです。

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  ショックといっしょにナックルアームも倒れるから、ホイールにキャンバー角が付く、ってことですよね。

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  そうですね。しかし、ショックの上側を軸（中心）とした回転運動みたいなものだから、ショックは下にいくほど外側方向に動きます。

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  下に行くほど外に出る。

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  で、ホイールの頂点の高さは、ざっくりで言うと、アッパーとロアアームの中間あたりに位置しています。

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  フムフム。

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  ……ということは、ロアアームを10ミリ延長したとすると、ロアアームとアッパーの中間にいるホイールは、単純計算で5ミリ前後は外に出ます。

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  むしろ太いホイールが履けなくなる!!

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  そもそも、どの位の太さのホイールが入るのか、というのは、ショックから、フェンダー鉄板までの幅に、何Jまで入るのかという話ですよね。

この幅で最大のリム幅が決まる


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  しかしロアアームを延長すると、ショック位置が外に出てきますから、フロントショックから、フェンダー鉄板までの幅が減るということになるんです。

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  ホイールを太くしたい場面で、やることではないんですね。

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  ストラット式の足回りで延長ロアアームを入れる主な目的は、ドライブシャフト対策です。


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  キャンバー角を付けたり車高を落としたりすると、ドライブシャフトには内側方向に押される力がかかります。

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  ドライブシャフトのドン突きは、前に教わったことがありますね。

  ※「ドライブシャフトのドン突きとは？ 解消する方法は？」参照。

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  普通車の場合はドン突きまではなかなかいかないけれど、それでもドライブシャフトブーツが密着したままになるので、破けるという問題が出てくる。



「車高が低い車の〈ドライブシャフトブーツの寿命〉を延ばす方法」参照。

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  J-LINEの30プリウスも、フロントはアッパーマウントで倒し、キャンバーボルトも入れていますから、その意味ではロアアームは10ミリ延長したいんです。

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  でも、実際に付けているのは、延長ナシ……。

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  それは、さっき説明したような事情により、10ミリ延長のロアアームを付けると、ハンドルがほとんど切れなくなってしまうためです。

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  延長しないほうがハンドルが切れるという状況だったので、泣く泣くやめたというわけですね。

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  延長ロアアーム作戦はNGということになりましたが……つまり、30プリウスのフロントに9J+38は無謀？

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  現状の8.5J+42を、9J+38にするということは、10ミリ位外に出てくることになりますよね。

ここから10ミリ出てくると…？


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  ウチのデモカーの仕様でいうと、今のままホイールを9J+38にしてもハミ出る可能性は低いですよね。

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  確かに。ちょうどその位、マージンが残っていますから。

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  1センチのスキマがあるなら、その分、もっと太いホイールが履けるはず……それはそうなんですが、「入る」ということと「履ける」は違うじゃないですか。

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  9Jが入らないわけではない？

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  そうですね。めいっぱいのサイズを突っ込んだ結果として、車高が落とせなくてもいい、ハンドルが切れなくなってもいい、ということあれば。

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  いや、それでは困るんですけど……

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  ですよね。J-LINEデモカーの場合は、アッパー側も可能な限り倒しているし、キャンバーボルトも入れているし……とにかく内側に入れて、低車高でもハンドルを切れるようにしよう、という作りになっています。

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  フムフム。

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  その作りでも、9J+42を入れたとしたら、「ハミ出るわけではないけれど、ハンドルは切れないし、当たるだろう」というレベルなんですね。

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  ウ〜ム。

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  これがもし、アッパーマウントでキャンバー角を付けられない車高調だったり、少ししか倒れないような車高調だとすると、30プリウスのフロントは、8.5J＋40や＋45でもキツイんです。

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  ……なるほど。

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  だから、J-LINEデモカーの仕様から逆算したら、9J+42を入れてもハミ出るわけではないけれど、基本的には30プリウスには入らないサイズです。

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  というわけで、るぱん145世さん、やめておきましょう〜！